午前中中国で仕事をして、午後遅くに香港へ移動した。
いつもは国境まで会社の運転手ライさんに送ってもらうのだが、今日は地下鉄。
そこでなんと、すごいものを見た。
みんな並んで電車を待っているではないか。ええーっ、なんで?
老人を押しのけてでもわれさきに乗り込み、席を取ろうとする中国の人が…。
な、な、並んでるーっ。それもちゃんと降りる人を待っている。そんな馬鹿な…。
じーん。カンドー。ちょっとうれしかった。
国境を抜け、山のほうを見ればそこでもきれいな夕焼け。
いままでこんなきれいな夕日は香港ではあり得ないと思っていた。
街が変わったからか、自分が変わったからか、よくわからないが
とにかく、最近到るところに愛の光を見る。
今日、昨日の〝ISO事件〟を本社へ報告するためリポートを書く。
書いている中でどうしても攻撃したい衝動に駆られる。
兄貴に訊く。この間違った考えを修正してください。
結局、レポートは出さなかった。
出すように言われていたのだが、出す必要はないと兄貴を信頼した。
以前の赦しのように「本社の役員に何を言われるか。その時にどう言い訳するか。」
ということが頭をよぎることはなくなった。
幻想なのだから。夢の相手をリアルにする必要はない。
帰りの電車で稲垣足穂の『一千一秒物語』を読む。僕の大好きな先輩だ。
かの三島由紀夫に「彼の作品は日本文学の最も微妙な花の一つ」
と言わしめた稲垣先輩の作品はやはり〝かわってる〟。
土曜日から香港では清明節の休暇が始まるが、この作品のエッセンスを
かみしめながら『ジンジャータウン』の執筆に専念しよう。