朝、少し早く起きてホテルの庭を散策した。
改めて建物を見る。かなり年季の入ったお屋敷だった。壁にかかっている写真を見れば、
ここはもともと旧エリック・モラー邸で、後にホテルに改造された建物だった。
いたる所、ひなびた感満載で、ここだけ時が止まっているような感覚に陥る。
今度、小説の執筆に何日かお籠りしてみよっと。
今日は移動だけなのでゆったりできた。空港のカフェでワインでも飲もうと思っていたが、
どうしたことか、飲みたいと思わない。結局、ペリエを注文した。
そう言えば、ここ最近お酒を飲んでいない。僕にとってはあり得ないことだ。
よく寝るし、食べる物も変化した。なんか、身体がどんどん書き換えられていく。
これも年をとったということなのか?
上海に来たくらいから〝世界はない〟という言葉が、ぐわんぐわん頭の中を駆け巡っている。
世界はない、と唱えるたび、なぜか、すごく安心したような、晴れやかな気分になる。
他者は自分の無意識の顕現だ→世界は自分だ→自分だと思っている世界なんかない
兄貴に操縦を任せた途端、1日ごとに変化してゆく。
世界はない。
もちろん、本やクラスで何度も学習してきた。分かってもいるし、信じてもいる。
だが、本当の意味で腑に落ちて、それそのものを実感、体験したのはここ数日のことだ。
やはり日常で、ちゃんとその言葉の意味を生きていくことが重要なのだと思った。
肉体を脱ぐまでは、この〝ない世界〟でやっていかねばならないのだし。
このまま兄貴自動操縦に任せていくとどうなるのか、それともまた別の展開になるのか。
ここからもっと進んでいくとどうなるのか、いまはジェットコースターみたいだが、
案外、しゅんと穏やかに落ち着いて行ったりするのかもしれない。
ただ、今回で終わらせることだけは忘れないで行こう!