明るい光が差し込む部屋で、静かに仕事ができるのは本当にありがたい。
アンフィニの休憩時間の時にかかっていた癒し音楽を流しながら仕事をする。
人が訪ねてきたり、いろいろ忙しかったりはするが、自分のデスクで忙しいのは全く平気だ。
ケリーがコーヒーを持ってきてくれたので、ソファで飲む。
うーん。いい気持ち。
だが、ぐっとおもいきり伸びをした瞬間、ぱかっ…。
ぎえっ!スラックスのチャックが開いてるー。
あわてて閉めるが、閉まらない。おおーっ、ファスナー壊れたあぁー。
何か穿くものないかな、とケリーに見つからぬよう、そっとクロゼットの中を捜す。
ジムでランニングをするときに穿く短パンがあったが、
これでは短すぎて、セクハラで訴えられるのは目に見えている。やばい。
と、なぜか日本でよく穿いていた、みんなもよくご存じの、
あのひざ丈までのグレーの半ズボンが出てきた。
東京出張から戻り、そのままオフィスのクロゼットに突っ込んであったのだ。
ああ、よかったあ。ラッキー!
さっそく着替える。
ブルーのワイシャツにグレーの半ズボン、茶色い皮靴とおっさんソックス。
じゃじゃーん、と言ってケリーに見せると、
夕方保険会社の総経理が来るのに、そんな格好で会うつもりか、と白い目で見られた。
あっ、そう言えば、さおちゃんも〝なに、この格好!〟っていうような顔してた。
ケリーに事情を説明すると、階下のショップに安いスラックスを売っているから、
買って穿きなさい、とアドバイスを受けた。
だが、ズボンのサイズのことを考えると、どうしても現実に直面する勇気がでない。
裾上げとかも面倒だし…。(※7月9日の記事ご参照)
そうこうするうち、ケリーが午後の来客をキャンセルしてくれた。
すんませーん。
昼休みになり、食欲もなかったので、ジムで少し走り、後は瞑想をして過ごした。
本当に空間が柔らかい。手を挿し入れれば、ずぼっ、と突き抜けてしまいそうだ。
いま、こうやって仕事をしたり、壊れたファスナーに対処したり、
癒しの音楽を聴いたりしている自分が本当の自分ではなく、
ただ数字によって設定されたとおりに反応している〝まやかし〟だということが
深く浸透してきている。
なので、この〝自分だと思っているヘンな生き物〟が言ったり、したりすることを
信用する必要はない。
このヘンな自分は、いつも自分で罪悪感を誘発するように行動したりするが、
もうこれが自分ではないのは分かっているので、いちいち付き合うことはない。
だんだん兄貴が自分になりつつある。