今日は業者さんたちを集めての 『仕入先説明会』 の日だった。
大いなる赦しの日から工場の電話は鳴りっぱなしだったが、応対してはいけないと、
弁護士から言われていた。受話器を取らなくても、相手の予測はつく。
仕入れ先業者からの、未払い金督促の電話だろう。
急に工場が閉鎖され、仕入れ業者の方たちも途方に暮れているはずだ。
長年、いろいろと無理を聞いてくれた業者さんたちなのだ。
ここは誠意を持って説明したい。
先ず、例の総経理が挨拶を読み上げた。
次に僕が未払い金の支払い方法について説明をする。
既に出荷が完了しているもの、注文をもらっていて、まだ出荷していないもの、
無理を言って在庫をストックしてもらっているもの、など。
それらの資料を配った表に記入し、インボイスのコピーなどを添付して
再度送り返していただくよう、お願いした。
というのも、あのコンババ購買員が、去り際に購買員全員のPCの中にあったデータを、
全て消去して行ってしまったので、受注残や買掛金がいくら残っているか、
まったく把握できないでいるのだ。そのことも業者の方々に説明した。
最後に、本社やほかの拠点は正常にオペレーションされており、
資金のショートもないことを繰り返し、購買部長へマイクを渡した。
僕が話し終えると、なぜか拍手が起こった。
説明会を終えた後も、仕入れ先の社長さんなどが駆け寄ってきてくれ、
たいへんだったねえ、と労をねぎらってくれたりした。
それに、なぜか女性の業者さんがみんな、購買部長ではなく、
なぜか僕のところに来て握手したり、記念写真を撮ったり、名刺をくれとせがまれたりした。
ええーっ?なんで?これって、ひょっとして…。俺がカッコイイってこと?
まあいい。そういうことにしておこう(笑)。
その後、データが消去されたハードディスクを持って、僕は香港へと戻った。
香港に向かう車中、
〝俺がいま経験している泣き笑い人生も、こんな箱の中で展開されているのかなあ。〟
と、 0 と 1 の設定がぎっしり詰まったこの四角い箱を、感慨深い思いで眺めていた。
香港でも毎日雨がすごい。ワイドショーでも土砂災害の被害が伝えられている。
広島の土砂災害で 「せめてこの子だけでも…。」 と、流されてゆくお父さんから託された
3歳児を救助しようとして、自らも土砂に流され、殉職された政岡消防司令補。
この兄弟が行った尊い行為と気高い精神に、さっき、しばしの黙とうを捧げた。
この方はその瞬間、肉体も分離もない、ひとつの意識の領域に存在されていたのだろう。
なんか、今日も何もしなかった。
物理的にはたくさん何かをしているのだけど、何にもしていないし、どこへも行っていない。
この感じ、うまく言えない。
何かしているように、何かされているように見えたそのそばから、赦してゆく。
〝父から離れてしまったという罪を、自分でも気ずいていない深い部分で信じている。
そして、この間違った錯覚をただ兄貴に依頼して修正してもらう。〟
という概念は、コースの中でもかなり中核をなすものではあるが、
僕の場合はあまりここを強調しないようにしている。
基本ベースで理解していることは絶対重要なのだが、
これを中心に日常で実践してゆくと、重すぎてちょっとシンドイ。
知っているのは大切だが、繰り返し言い聞かせる必要はない、と思っている。
それより、僕はデジタルベースでの理解のほうが、兄貴に任せやすい。
兄貴にもただ修正をお願いするだけ。
個人ベースで、しっくりいく姿勢があるので
〝習ったのはこうなのに、マスターに質問したら、こうだと言っていたけれど、
わたしはなんか、だめよ〜、だめだめ!〟
というときには、自分の内なる声を優先すればいいと思う。
兄貴に任せることを忘れなければ、いずれ修正されると思うから。