香港さんといっしょ!ー純粋非二元で目醒めを生きるー

欲望都市香港で覚醒した意識で生きることを実践中。今回を最後の生にするための日常を綴っています。

進撃の巨人

今回の東京での滞在スケジュールは、飛行機からイベントのチケットまで、

全て一緒に来た香港人の友人たちに任せていた。

自分一人だったら絶対に選択しなかったであろうホテル、食事、そして行動。

自分は普段、仕事も含めたほとんどの事柄を直感で決めることが多い。

大概はその直感が外れることはなく、

もっともワクワクの最適化された量子ビットの配列となる。

(※ 注: 23,000円アルマーニのネクタイは例外。)

しかし、今回はなぜか、全てお任せで行動してみようと直感したのだ。

結果は散々だった。

まずは食べ歩きだが、朝9時からとんこつラーメンを食べさせられ、

お昼に、『ねぎし』の赤牛タントリプル定食を食べた後に、

銀だこのクロワッサンたい焼き3個と、ルミネエストで大盛りパフェ。

締めの夕食は牛しゃぶ食べ放題ときた。

また、どれもおいしいので食べてしまうところがツラい。

買物はと言えば、アメ横で一軒一軒値切りながら店を渡り歩き、

最後に一番安かったところで買うというやり方につきあった。

それはもう徹底していて、お土産用の味付け海苔(なんでこれがお土産?)

を買うのもこの調子なので、時間がかかって仕方がない。

ホテルも 「香港さんがこのホテルに泊まるなんて珍しいねえ。」

と兄弟てっちゃんに言われるほど、エコノミーなところだった。


で、メインのイベントはと言うと、1日目は食べ歩き、3日目がきよしまつりで、

なか2日目が 『進撃の巨人』 展の観覧、だった。

上野美術館にたどり着くや、月曜日にもかかわらず、ものすごい行列だった。

寒さのなか、何時間も行列なんて冗談じゃない。

それに『進撃の巨人』なんて見たことも聞いたこともないし、

第一アニメオタクにはなんの興味もない。

しかし、チケットは購入済、観ないわけにはいかない。


『進撃の巨人展』のイベント会場は二つに分かれていて、

ひとつが普通の展示場で、もうひとつが360度リアル映像体感シアターだ。

みんなのお目当てはどうやら後者の方らしい。

上下前後左右360度の立体映像が映し出されるゴーグルと、

外部と音が完全に遮断されるイヤホンを装着し、

『進撃の巨人』の架空空間の中に自分も完全に入り込んで、

登場人物と共にリアルに巨人と戦う、というもので、

まあ、どうせ3Dに毛が生えた程度の映像を5分ほど見せられるのだろう、

これを見るために、この寒空の中、1時間以上も並ぶなんて、信じられない。

厭だ厭だ厭だ、でも起きてない、でも寒い、でも兄貴選びます、

とやっていたら、兄貴からひとこと。

「私、失敗しないので…。」

やっとこさ、自分の番が来て、シアターの中に入った。

シアターと言っても、ただテーブルの上にゴーグルとイヤホンが並んでいるだけだ。

声優のような声を出すおねえさんに誘導されるまま、

席につき、ゴーグルとイヤホンを装着する。

装着した途端、視覚や聴覚が完全に外部と遮断された。

目の前に四角いスクリーンが見える。

そこには、進撃の巨人の街らしきものが映っている。

主人公っぽい女の子がやってきて、僕の目を見つめながら、

 「さあ、一緒に、戦って!」 と、言われた。

次の瞬間、スクリーンの枠が消え、バンッ!と景色が視界全体に広がった。

見渡す限り、リアルそのもののバーチャル空間の中に自分は立っている。

と、全裸の巨人が自分の頭上を通り過ぎてゆく。

臨場感満点の音がそれに重なる。

次に、巨人につまみあげられ、わーっとなったところを、

さっきの女の子に助けられた。

そして、巨人に掴まれ、石の壁に叩き付けられる。

その衝撃に合わせて自分の身体が左右に振動する。

空を飛ぶ。前方から風を感じる。

ふと、後ろを振り返ると、さっきまで自分がいた場所が遠くに見え、

そこで巨人たちがなにやらしているのが見えた。

上を見ればコンドルが空を飛んでいる。下には逃げ惑う人々。

隣を見れば、落ちてゆく夕陽と、戦う人たちの群れ。

これは、自分が見た時だけ映し出される映像で、

見ていないときにはない光景だ。

しかし、自分が見ていない時もそこにあるような現実感がある。

と、そのとき、自分の鼻の辺りに光が見えた。

ゴーグルの装着が不十分で外の光が漏れて来ていたのだ。

やばい。せっかく楽しんでいるのに、これじゃ、面白くない。

ちゃんとバーチャル空間に入り込めるよう、

鼻にぴったりとゴーグルが来るよう調整をしなおした。

これでよし。再度、バーチャル映像に入り込む。

うわあ。巨人に捕まってしまったあー。ああー、呑み込まれるぅーっ。

巨人の歯に噛み砕かれそうになったところを、味方の少女に救出された。


映像が終わった。10分足らずだったと思うが、

その間、僕は完全にこのバーチャル世界に没頭していた。

それくらい映像は臨場感に溢れ、風や振動までが本物そのものだった。

それに、スクリーンの中では次々に物語が起こってゆくので、

静かに物語を見ている〝もうひとりの自分〟を忘れがちになるのだ。

ただ、映像がアニメだったのと、時間が短かったため、

〝これはウソで、自分は今、遊びで楽しんでいるんだ。〟

と理解しながら見ていられたが、これが24時間だったらどうなっていただろう。

子供だったら、絶対に我を忘れていたに違いない。

それに、普通の映画と違い、

自分の肉体さえもこの映像の中に組み込まれてしまうため、

〝観劇しているもう一人の自分〟なんてすぐに消されてしまう。

僕たちもきっと、今、この瞬間も、

この360度上下前後左右体感シアターの中で、夢を見ているのだろう。

みんなそれぞれのゴーグルとイヤホンを身に着けながら、

すったもんだやっている。

バーチャルの中で死んでも、また次の物語が始まるだけだ。

ただ、途中、面白かったのは、装着したゴーグルの鼻のところに隙間ができ、

そこから現実の光が漏れた瞬間、はっと我に返ったことだ。

さしずめ、これが実相の世界から来るハートの光と言うところだろう。


いまの自分が、このゴーグルとイヤホン装着状態であることは明白だ。

ゴーグルを外すには、自分の周囲に広がっている光の世界を絶えず意識し、

誘導してくれているお姉さんに、

「もういいです。バーチャルは終わりにします。映像を消してください。

ゴーグルを取ってください。」とお願いするしかない。

そうすることで、誘導係のおねえさんは、僕たちを怖がらせることなく、

ゆっくりと画面の中の物語を取り消し、

平安の物語へ切り替えて行ってくれるのだろう。


シアターを出ると、他のメンバーたちはすぐに現実へ戻り、

アメ横での買い物に奔走し始めた。

しかし、僕はずっと、さっき見たバーチャルな映像と、

いまこの眼前に広がっている世界について考えていた。

そして、このバーチャル空間の周囲に今も広がっている、

ゴーグルを取り去った時に顕れる世界を思った。


「はい。もう、こんな嘘の体感は要りません。ゲームを止めます。」

何のためらいもなく僕がそう宣言するのを、

誘導係のお姉さんは静かに待っている。


〝わたしは決してあなたを見捨てはしない。

 
 しかし、あなたが自分自身を見捨てることを選んでいる間は、

 私は待たなければならない。

 あなたは必ず本気で頼むようになるだろう。

 少しのためらいもない一つの呼びかけさえあれば、

 それに応えて、私は来るだろう。〟(※奇蹟講座の初めのほう。)