今日は佛山工場だった。そして、明日も佛山工場である。
夕方、工場近くの安宿にチェックインした。
なぜここかというと、部屋に暖房があるからだ。
今夜の気温は摂氏7度。
にもかかわらず、亜熱帯地方に属する広東地方では、
5つ星の高級ホテルでさえ暖房が完備されていない。
そこでうちの総経理が、暖房付きのホテルを探しまわり、
やっとこさ、このホテルを見つけてきたのだった。
おかげで、部屋のなかではTシャツ一枚で過ごせる。
それに職場にも近いので、ぎりぎりまで寝ていられる。
ありがとう、総経理。
そして、このホテル周辺の街並みが、またすごい。
哀愁漂う場末感がハンパないのだ。
夜、散髪へ行き、近くの回教レストランに入った。
蘭州牛肉ラーメンを注文すると、
ウイグル人の大将が、生活に疲れ切った表情で
麺を打ちはじめた。その横で、見るからに幸薄そうな、
賠償美津子っぽい女将さんが、黙々と打った麺を茹でる。
辺りをよく見ると、暗いのはこの店だけはでなく、
街自体が暗かった。まだ夜7時だというのに、
ほとんどの店がシャッターを下ろし、
やさぐれ感満載のケバいお姉さんたちが、
アンニュイな表情で煙草をふかしたりしている。
閑散とした通りに、しょぼいネオンがチカチカ点滅し、
アイススケート場から聞こえる大音量の音楽だけが
むなしく響く。それにしてもアイススケートって…。
一体、誰が滑るんだろう? 維持費はどうしてるのか。
ああ、藤圭子の世界。
さびれた炭鉱街を髣髴とさせるこのうらぶれ感。
ううっ…。 たまらないぜ。
ここで兄弟てっちゃんが作業着姿でひとり、
酒でも飲んでたら、もう完ぺき!
そして、両手を天に突きだし、頭のてっぺんを
ウツボカズラのようにパカっと開け、
ハートをパカパカさせながら、
野良犬がゴミを漁る路地を、
大放電状態でさまよう僕。
やっぱ、完璧!