小切手サイン→防火演習→労働局→空港
という感じで、フィリピンの一日は過ぎたのだった。
なんか、フィリピンの人って、
いつでもどこでも、わいわいやってる。
空港の待合室でダンスしてたし、
帰りのタイガーエアーの乗務員さんも、
水を頼んだら「オーゥ!イェァー!オーケーイッ!」
と、半端ないノリで答えてくれる。
防火演習でも「倉庫と製造と食堂から火が出ました。」
という放送が流れたが、3か所同時出火なんて、
放火以外あり得ないじゃん!
そして、点呼を終え、前の道路に整列していると、
「救助隊員は残された人の救助に向かって下さい。」
と、拡声器の声が響いたと同時に、
救助隊員(普通の社員)たちが「ヒューヒューッ!」
と両手を上げながら、工場の中へ駆け込んでいった。
消防隊員でもない普通の社員が救助隊員って…。
突っ込みどころ満載の防火演習。
でも、楽しかったあー。
↑恐怖の現金チェック。どこへ行っても銭勘定だ。
昼から総務の女の子に連れられ、
労働局へ労働ビザの申請に行く。
オフィサーの部屋へ通され、インタビューを受けた。
しかし、なまりが強すぎて全然聞き取れず、
適当に「イエス。イエス。」と言っていたら
いつのまにか申請が通ってしまった。
昨日も書いたが、フィリピンの人、建物、乗り物、町並み、
特に、言葉使いに至っては、
〝イエス〟と返事する時も〝イエス ポーッ〟
〝サンキュー〟と答える時も〝サンキュー ポーッ〟
と、なんでも最後にポーを付けるので、
ほんと〝たのしいポーッ!〟なのだ。
香港への帰途は、タイガー航空だった。
機内でうつらうつらしていると、夢かうつつか、
あるイメージの映像が眼前に差し出された。
僕は、大きな光の球体の前に立っている。
その光に向かって進もうとして、
ふと後ろを振り返ってみると、
過去に出会ったたくさんの人々、
例えば、仲の悪かった同僚、疎遠になっている友人、
別れた恋人、昔僕をいじめてた人、など、
無数の知り合いたちが、こちらを見ながら
笑顔で手を振っているのが見えた。
そしてこの光景は、みんなが旅立つ僕に対して、
笑顔で別れを告げているようにも見えた。
苦手だった会社の同僚が、しっ!しっ!
と、手で僕を追い払うように、
早く行け、と告げている。
また、昔、けんか別れした友人が、
ぴょんぴょん飛び跳ねながら、バイバーイ
と、笑いながら手を振っている。
そんな感じで、みんなが、やったね、
と僕を祝福してくれているみたいに、
早く行け、と手を振ってくれているのだ。
多分、10秒くらいの出来事だったと思う。
映像のなかの人々は、やがて、ひとり、またひとり
と消えていき、最後は光だけが残った。
はっ、と目が醒め、我に返った。
そして、その映像が示す意味を理解した瞬間、
兄弟たちに対する深い愛を感じて、泣きそうになった。
兄弟は、僕を〝帰還させる〟ための協力者だった。
全ての出来事は、僕をおおもとへ帰すために、
嫌な役目を引き受け、いろいろ仕掛けてくれていたのだ。
そう言う意味で、兄弟には感謝しかない。