『エンドレス・マーダー』という映画を観た。
当初、題名も題名だし 、
(原題は:THE SUICIDE THEORY )
クラウドのストーリー解説では、
冷酷無比な殺し屋が、殺しても死なない男から、
「自分を殺してくれ」という依頼を受け、
そこから血みどろの駆け引きが始まり、みたいな…。
ジャンルも、サスペンスアクションとなっていたので、
てっきり、ただのドンドンパチパチ映画だと思い、
無視してチャンネルをNHKの台風情報に合わせ、
台所でコーヒーを淹れて再び戻ってみたら、
なぜか、その映画が勝手に始まっていた。
そして、まあ、いっか、と何気なく見始めたら、
もう、まさにこれが、
兄貴に導かれて見せられた映画だったのだ!
ただ、この映画、
日本では、クールな殺し屋のアクション映画として
公開されてしまった為、アクション映画ファンからは、
モノ足りない、と、総スカンを食らい、
スピ映画ファンからは、存在にも気づかれないという、
ある意味、とても不運な作品となってしまっている。
この映画のテーマはズバリ〝運命の必然性〟だ。
表面的には、
愛する恋人をひき逃げされた殺し屋の復讐劇と、
どんな手を尽くしても死ぬことができない男との、
熾烈なやりとりを描いた作品のように見えるが、
実際には、人生を半降りしてしまった男二人が、
複雑な巡りあわせの中で、
それぞれの運命を受け入れることによって、
それぞれの苦しみから解放される物語である。
絶対に死ねない男が、愛を発見したとき、
殺し屋が、運命を理解し、真に赦したとき、
彼らに本当の意味での死(平安)が訪れる。
そうやって、あるがままを受け入れることの意味が、
スピとはおよそ無縁な映像によって表現されている。
まっさらな状態で観ていただきたいので、
詳細は割愛するが、前半は淡々と進行し、
終盤、大どんでん返しの、そのまたどんでん返しの末
前半に敷かれたあらゆる伏線が繋がり、
そこからひとつの〝真理〟が炙りだされてくるという、
スピ的要素を前面に押し出した『祈りのちから』や、
『シャック』などとはまた一味違った
味わい深い作品となっている。(なぜか最後は泣けた)
スピ的に観るのなら〝あらすじ、ネタバレ〟なんかで、
事前検索などせずに観ていただくのがベストである。
それにしても、もともとNHKの台風情報だったのが、
どうして、この映画に変わってしまっていたのか、
不思議と言えば、不思議であるが、
来るものを全て受け入れる覚悟が整った僕に、今回、
グッドタイミングで兄貴から差し出された映画だった。