今週は月曜からフィリピン出張だった。
初日の午後、工場のオフィスで仕事をして、
そろそろホテルへ戻ろうかな、と帰り支度をしていると、
ぐらぐらぐらっと部屋全体が揺れ始めた。
次第に揺れは激しくなり、テーブルのペンが転げ落ちて、
立っていられないほどになった時、地震だ、と気づいた。
逃げろ、という誰かの声を聞いて、工場の外へ出た。
日本でもあまり経験のないくらいの大きな地震だった。
地震慣れしていないフィリピンの人たちは、
泣き出したり、中には失神してしまう人もいて、
一時、工場は騒然となった。
それにしても、突然、大きな災害に見舞われると、
人って、頭が真っ白になり、一歩も動けなくなるんだね。
僕も、誰かが発した、地震だ逃げろ、の一声で、
ハッと我に返り、身体を動かすことができた。
だから、なにか、突発的な出来事が起こった時は、
みんなで声をかけ合うのが何より大事だ、
と、今回の経験から痛感したのだった。
ホテルに戻り、ニュースを見てみると、
今日の地震は震度6弱だった。
工場のあるスービックから二時間ほどの距離にある、
クラークという街の被害が最も大きく、
家屋が倒壊するなどの被害が出ているという。
クラークは、空港のある場所でもあったので、
帰りの飛行機が飛ぶのかどうか心配していたら、
案の定、空港は閉鎖され、便はキャンセルとなった。
夜、二時頃に余震で目覚めた。
それから、また、心臓の奥が〝ざわざわ〟しはじめた。
それはやがてドキドキからズキズキへと変わった。
地震の恐怖に対してズキズキしているのでもなければ、
外側の出来事が原因で動揺しているのでもなかった。
ただ、今回の地震が引き金となって、僕の心の中から
何かが揺さぶり出されてきたような気がした。
僕の心の中も震度6弱で揺れている。
その意味不明な心の中の揺れを、じっと見つめる。
聖霊兄貴の光の中で、ただ感じて差し出し続ける。
そうこうしているうちに、いつの間にか眠りに落ちた。
結局、クラーク空港が閉鎖になったので、
マニラから香港へ戻ることになった。
朝5時に起き、工場の社用車でマニラ空港へ向かった。
鉄道のないマニラの街は常に渋滞している。
車窓から、混沌としたマニラの街並みを眺めつつ、
自分はなんでこんな夢を見ているのだろうと思った。
この世界、何の意味もない、と心底思った。
今日の地震も、ひょっとして、
こんな無意味な夢を見るのを止めて目を醒ましなさい、と
夢の外から、ゆさぶりをかけられているような気がした。
それはちょうど、
ベッドで眠っている本人が小便に行きたくなったとして、
本当は夢から醒めてベッドから起き上がり、
トイレまで歩いて行って小便をすればいいのに、
それを夢の中でやっているのに似ている。(笑!)
「あっ、自分は一切を与えられている神の子だったんだ。」
という、大いなる自覚が〝ふっ〟と去来した。
つづく…。