今日、会社のトイレで用を足していたら(小のほう)、
(※もちろん僕は男なので、立って用を足す)
便器の右端の空中に、直径2ミリほどの、
小さな黒い物体が浮かんでいるのを発見した。
何だろう、とよく目を凝らしてみれば、
それは一匹のクモだった。
点のように小さなクモが、便器に巣を張ろうとしている。
一瞬、どうしよう、と思った。
このまま水を流せば、クモはひとたまりもない。
手でクモをすくって逃がしてやろうとすれば、
きっと、自分の指が便器に触れるだろう。
棒か何かに絡ませて捕るにはクモはあまりにも小さすぎ
一歩間違えば、水の中へ落ちてしまうかもしれない。
掃除用のゴム手袋をしてだと、ゴワゴワしすぎて、
2ミリ足らずのクモを押しつぶしかねない。
用を足し終えた僕は、しばしクモを凝視していた。
彼は小さいながらも懸命に糸を吐き、巣作りをしている。
「なんか自分みたいだ」と思った瞬間、僕は手を伸ばし、
そのクモを掌に載せてすくい上げていた。
窓辺に置かれた鉢植えの上に手を持ってゆくと、
クモは大急ぎで逃げて行った。
ああ、助かったあ、よかったあ、と僕は胸をなでおろした。
でも、助けた後で思ったのだが、あのクモはきっと、
自分が助けられた、なんて思ってもいないのだろうな。
それどころか、とんだ災難に遭った、と感じているだろう。
きっと僕たちも、このクモと五十歩百歩なんだよ。
それにしても、
なんであんな場所に巣なんか作ろうと思ったのか。
謎な行動をするあたり、
さすが、僕の夢のストーリーに出てくるクモだけある!