いま住んでいるアパートの部屋が大好きである。
27年の香港生活の中で一番好きかもしれない。
部屋の内装や周囲の環境も気に入っている要因だが、
何より大家さん夫妻が、優しく穏やかで素敵なのだ。
香港では、投資のために家を買う人がほとんどで、
修理や契約も業者に任せっきりなのが普通なのに、
この40台後半くらいの二人は、
部屋の明け渡し前日に自分たちで掃除されていたし、
エアコンの取り換え工事も丁寧に対応して下さった。
お金と教養を持ち合わせた人特有の、
落ち着きと優しさがあり、
その〝優しい感じ〟が部屋に反映されているのだ。
僕はすでに香港で10回以上引っ越しをしているが、
家主の意識が部屋に反映されると確信している。
なので、部屋を借りる際は、内装のきれいさよりも、
大家さんの人柄を重視してきた。
また逆に、その時の自分の意識が〝すさんで〟いると、
好い大家さんや好い物件には巡り合えなかったりする。
というのも、
僕がまだ香港に来たばかりの頃に部屋探しをした時、
新内装で家具も電化製品も新品、大家さんの感じもいい
という物件があり、不動産屋さんもお薦めだったが、
階数が13階、という部分にこだわってしまった僕は、
もう一つの、まあまあそれなりのフラットを契約した。
ところが、それがとんでもない部屋で、
寝ていると金縛りに遭うわ、
布団の上へ誰かが乗っかってくるわ、
別の部屋で誰かがどたどたと走り回る音が聞こえるわ、
その上、いつも誰かがおぶさっているように背中が重く、
なぜか足が無くなる恐怖に怯え出し、
それからは刃物が怖くて怖くて仕方がなくなった。
結局、転職を機に、一年でその部屋を出た。
多分、香港に来たばかりの当時の自分は、
常にテンパっていて、何をするにも余裕がなく、
自分が不当な扱いを受けないかと警戒ばかりしていて、
いま、ここに在る平安を味わうことができていなかった。
いつも不安でイライラしていて、
当時優しくしてくれる人達に感謝する余裕すらなかった。
だから、この部屋に入居したから、
物事がうまくいかなくなったのではなく、
その時の僕のすさんだ意識状態が、
こういう物件を選ばせたのだ、と今ならわかる。
部屋は自分の心の状態を映し出す、と言われるが、
そういう意味で、今、サイコーに大好きーっ、
と思えるような場所に住めているのはきっと、
ちゃんと自分の中にある神を肯定できており、
きちんと心が癒されていっている証拠なのだな、
と思うのだ。
あなたは、
自分がいま住んでいる場所が好きですか?