香港さんといっしょ!ー純粋非二元で目醒めを生きるー

欲望都市香港で覚醒した意識で生きることを実践中。今回を最後の生にするための日常を綴っています。

僕らの時代-2

 

 

一方、孝弘はというと、

 

森ノ宮の木造アパートの実家に一人で暮らしていた。

 

両親はすでに亡くなり、彼の兄弟とも音信不通だった。

 

電話も通じず、ケータイの番号も知らなかったので、

 

一度、日本へ帰国した折に彼を訪ねたが返事は無く、

 

近所に住む顔見知りの大家さんに話を聞くと、

 

家の中にはいるみたいなのだが、

 

家賃を滞納したまま、全く姿をみせないのだという。

 

一度、民生委員を通じて無理やりドアをこじ開け、

 

病院に連れて行こうとしたものの、

 

すごい抵抗に遭い、断念したのだと言われた。

 

お金もなく、どうやって生活をしているのかも分らない。

 

とりあえず僕はコンビニで食料を大量に買い込み、

 

ドアノブにかけて、中にいるであろう孝弘に向かって、

 

食料を置いといたから食べてくれ、と叫んで帰った。

 

 

 

 

あれから十数年が経ち、僕は日本へ完全帰国した。

 

それで先日、本町にある会社の面接を受けた帰り、

 

地下鉄中央線の〝森ノ宮方面〟という表示を見て、

 

孝弘を訪ねてみようと思い立った。

 

高層マンションが立ち並ぶ森ノ宮に当時の面影はなく

 

あちこち歩いても彼のアパートを見つけられなかった。

 

スーツを着てるし、革靴だし、もう帰ろうと思い、

 

地下鉄の階段を降り始めた時、なぜか突然、

 

やっぱり、もう一度歩いてみよう、と思い直した。

 

それで、引き返してあちこち歩いていると、

 

あの古びた、木造アパートが見つかったのだ。

 

見れば、一階の彼の部屋には明かりがついている。

 

ドンドン、と食い気味にノックをする。扉が開いた。

 

最初、彼が孝弘だとはわからなかった。

 

「たかひろ、か?」「おおっ、周作やんけー!」

 

なじみのある彼の部屋に入った。

 

 

彼の部屋はもう正真正銘のゴミ屋敷だった。

 

本やゴミの山に埋もれとても人が住める状態ではなく

 

辛うじて寝るスペースだけがある程度だった。

 

彼は布団らしきものが敷かれた地べたに座り、

 

僕はひとつだけあった椅子に座った。

 

彼曰く、十数年前からずっと、

 

「死ね」という宇宙人からの幻聴に悩まされ、

 

ずっと宇宙人に殺されることに怯えていたという。

 

結局、

 

大阪城から飛び降りようとしたが、飛びが甘く(笑)

 

最後は警察に保護され、そこで統合失調症と診断され、

 

投薬と、保護ヘルパーの助けによって、

 

なんとか今は正常に戻っているらしい。

 

その後、生活保護と障害者手当を申請し、

 

今は自立した生活ができている。

 

 

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「雄太は年に二、三回訪ねてきてくれてるよ」

 

「このアパートも12月に取り壊しになるんや」

 

「お前がドアに掛けておいてくれた食料は

 

 ちゃんと食べたよ」

 

 

何かに達観したような飄々とした表情で孝弘は語った。

 

僕のマンションから自転車で行ける距離なこともあり、

 

それからはちょくちょく彼を訪ねるようになった。

 

 

つづく…。