模擬実習が始まっている。
クラスのみんなの前で実際に授業をするのだが、
持ち時間は一人13分で、その時間内に、
それぞれ与えられた日本語のフレーズを導入する。
僕の授業は来週の1月17日で、授業の目標課題は、
「~が...たいです」の意味と用法を導入し、
「わたしは、ビールが飲みたいです」
「どんなビールが飲みたいですか?」
「スーパードライが飲みたいです」
と、自分のしたいことが言えるようにすることである。
ただ、授業は日本語しか使ってはならず、
学習者がまだ習っていない日本語も使えないので、
ごく限られた、初級者が知っている日本語だけで、
「~したい」の意味を理解させなければならない。
よって、絵カードなどを駆使して練習するのだが、
DAISOでマグネットや画用紙やのりなんかを購入し、
教材を作っていると、だんだん昔を思い出した。
20年ほど前にも、僕は、非常勤講師として、
香港大学で日本語を教えていたことがあるのだが、
もう二度と日本語を教えることなどないだろう、と、
当時作った大量の絵カードや、動詞カードや、教案を、
帰国する際に全て廃棄してしまっていた。
あああ、あの教材さえあれば、楽勝だったのに…。
台湾へ行って教える際にも苦労せずに済むのに…。
なんで捨ててしまったんだ、ばかばかばか、と、
後悔にのた打ち回りながら教材の準備をした。
兄貴も兄貴だ。
捨てようとした時に俺のケツを蹴りあげるとか、
訪ねてきた友人に捨ててはいけないと言わせるとか、
なにかしらの〝止め〟を入れてくれてもいいじゃん!
ほんと使えない、と兄貴に悪態をつきまくっていたら、
「捨てても大丈夫なんだよ、日本語の教材なんて、
台湾に行ってもどうせ使わないんだから…」
と言われた。
お、お、お、おい、ちょっと待てよ!
そ、そ、それってどういう意味や!
(声がうわずるボク…)
👇 読んだ人も今一度読むべし!
というわけで、もう1月なので、
先生の勧めに従っていろいろ台湾での求人を見ている。
求人募集はかなりの数があり、他の生徒さんたちも、
台湾で教えることに興味を持つ人は多いのだけれど、
台湾は物価が安い代わりに給料も16万円程度と低く、
家庭を持つ働き盛りの人にはこの給料では厳しいため、
それなら日本で教えた方が、となるパターンが多い。
僕の場合は、将来的には厚生年金が入るので、
男一匹、このお給料で、もう十分やっていける。
それに、台湾で小説を出版する準備もあるし…。
とはいっても、兄貴から、いきなりドッカーン、と、
まったく違う、東アジア圏でのお役目がやってくる気配
がプンプンしており、まだまだ油断は禁物である。