前回、舌がん事件でお世話になり、
祇園で僕の帰国祝いをしてくれた旧友のT医師と、
またまた食事をすることになり、京都まで行ってきた。
どうせ雅(みやび)な時間を過ごすなら出発から、と
今回は、京阪電車のプレミアムシートを利用した。
京都の三条駅の改札を抜けると、T氏に迎えられた。
まだ時間も早かったので、先ずはT氏のアパートで、
ビールやシャンパンを飲みながらダベることになった。
「いただき物のシャンパンやワインが売るほどあるので
今日はたくさん飲んで!」と、さすがのセレブ発言。
👆 今日は京都三条通りでブイブイ、どすえ!
T氏の部屋でしこたまシャンパンを飲んだ後、
烏丸(からすま)富小路にある料亭旅館『吉川』で、
ディナーをした。
ここは、クエやハモや蟹など、季節の旬の素材を、
天ぷらにして出してくれる料亭で、舞妓さんも呼べる。
中でも、アユの天ぷらとイチジクのデザートは絶品で、
もう、写真を撮るのも忘れるほど〝神〟だった。
T医師は最近学会でアイスランドに行ってきたらしく、
この地は、僕が死ぬまでに行きたい場所でもあり、
いろいろ話が聞けてうれしかった。
また僕は僕で、大学の学生達とのバトルの話をして、
おおいに盛り上がった。
とは言っても、彼は、
「俺は医者だぜ!ふっふーん!」みたいな人ではなく、
木曜日の休診日以外、朝10時から、終電まで、
診療所に籠りきりの〝診療ヲタ〟でもある。
👆 はも と あゆ が美味すぎて神!
今年68歳になるT医師は、僕よりずっと年上なのだが
知り合った学生時代から、僕の兄貴的存在だった。
なんていうか、僕からすれば、彼の人生は、
光と栄光に満ちていて、真夏の午後2時の太陽のように、
一点の曇りもないように思える。
まあ、彼にとっての苦労は色々あったのだろうが、
そんなの、一般庶民からすれば、へ、でもないものだ。
もう、恵まれすぎていて、嫉(そね)み妬みさえ起きない。
まさに彼は、僕にとってのヒーローだった。
しかし、かといって、
彼のような人生を歩みたい、とは思わなかった。
当時、世界中を飛び回りたかった僕にとって、
ずっと病院の中で過ごす人生などあり得なかった。
👆 わてのおでこ、てっかてか、でっしゃろ!
やはり、
人それぞれ持って生まれた性分、というものがあり、
人は、その性分に委ねて生きるようになっているのだ。
どちらが好くて、どちらが悪い、のでもない。
そして、いちばん不幸なのは、自己の性分に抵抗し、
人の生き方をうらやみ、または、親の理想に従い、
他人の人生を生きてしまうことにある。
とまあ、そんなことに思いを馳せた、京の夜であった。
(つづく…)