
👆 高重量で筋トレを始めたので
そろそろベルトが必要かなあ、と思い始めた
今この瞬間に抵抗せず、そのままの流れを許容し、
見えているまんま、聞こえているまんま、
思えているまんまで生活できていても、突然、
バーン、と分離に針が振れてしまうことがある。

春休みの間(骨折する前の3月ごろ)、
集中的に筋トレを頑張っていたのだ。
社畜族がいなくなる、夜の11時頃にジムへ行き、
深夜1時ごろまで高重量でみっちり筋肉を鍛え、
それからシャワーを浴びて2時ごろ帰宅する。
深夜のジムには、数人の常連さんしかおらず、
マシンや器具も使い放題なので気に入っていた。
そして、そんな常連さんの中に、ある年配の男性
(60代/背中だけマッチョ/腹出てる/白髪角刈り)
がいた。
彼はいつも背中ばかりを黙々と鍛えていて、
僕が、背中以外の部位を鍛える日は問題ないのだが、
背中を鍛える日は、使うマシンが彼と被ってしまう。
しかも、ひとつのマシンを30分以上独占するので、
こちらが、他のマシンを使いながら調整しても、
どうしても待たなければならない時間が生じるのだった。
〝このマシンさえ使えれば上がれるのに、クソが!〟
〝背中を鍛える前に、デブった腹を何とかしろよ!〟
と、心の中で悪態をつきながら、これ見よがしに、
彼のすぐ近くで10分くらい待つのが常だった。

そんな時、立場が逆転する出来事が起こった。
僕が、あるマシンで背中を鍛えていたとき、
彼がやってきて僕が使い終わるのを待ち始めたのだ。
「よっしゃーっ!」と思った。
日頃のリベンジを果たすべく、僕はわざとゆっくり、
インターバルを長めに取りながらそのマシンを使った。
普通なら15分ほどで終わるトレを、重量を増やし、
セット数も増やし、40分近くかけてじっくりと鍛えた。
その間、彼はずっと、立ったまま待っていた。
内心「ざまーみろ!」と思った。
もっと長引かせて、思い知らせてやろう、と思った。
しかし、彼はただ、穏やかな表情でじっと待っていた。
睨みつけてくる訳でもなければ、イラつく様子もない。
そんな彼の様子に「あっ、オレ、分離してる」と思った。
外側に、自分とは別の誰かがいる、と信じている。
悪いのは、いつもマシンを独占しているアイツで、
だから、自分は仕返しをして当然だ、そして、
仕返しができて勝った、と思っている自分がいる。
しかし、僕の意地悪なんて歯牙にもかけない、
彼の、穏やかで、何かに達観したような表情から、
「分離はしてないよ、僕は君自身のなのだよ!」
と彼が教えてくれているような気がしたのだ。
それから、僕は即行で兄弟にマシンを譲った。
そんなことがあってから、なぜか不思議なことに、
彼と使うマシンが被らなくなった。
そうなのだ、
彼は僕自身の活動そのものだったのだった。