
一斗を出てから天王寺のバーで飲むことになり、
飛田新地を通って天王寺へと向かった。
飛田新地は、遊郭の面影を残す歴史的なエリアで、
通りの両側に、料亭と称する店がずらりと並び、
ライトアップされた玄関には、裸同然の女の子が、
笑顔で座っている。(これを顔見せというらしい)
どの店の女の子もみんな若くて可愛く、戸口には、
〝やり手ババア〟と呼ばれるおばさんがおり、
僕たちが通ると、笑顔で手招きをする。
女の子は一軒の店に一人だけという決まりで、
女の子が接客中の店はババアが金勘定をしている。

👆やり手ババアと女の子
若くてかわいい女の子が多い青春通り、
年配女性が多い妖怪通り、など、
独特の名称でカテゴライズされていて、
これらの店は全て料亭として登録されている。
客は奥の料亭でお茶やお菓子(食事)の提供を受け、
そこの中居さんと自由恋愛に至るというロジックだ。

👆一般女性の立ち入りは観光目的でもタブー
この日は氷点下に近い夜だったにもかかわらず、
通りはかなりの男たちでにぎわっていた。
歴史を感じさせる大正時代っぽい通りや建物は、
ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
こんなディープな場所があったなんて、と思う一方、
低俗さやイヤらしさは全く感じなかった。
そこには、歴史と伝統に基づいた風格と、
何とも言えない儚げな風情があった。

👆今は登録文化財に指定され、
完全予約制で食事ができる〝百番〟
通りを歩きながら、自分は今夢を見ている、と思った。
これ全部夢で真実ではないんだ、だから大丈夫なんだ
と思うと、なんだかホッとした気持ちに襲われた。
しかし、これ全部夢なんだあ、で終わっていては、
夢から目覚めることはできない。
どうしてこの夢を見ることになったのか、
なんでこんなことになってしまったのかを、
ちゃんと知覚して赦す。
神を選び直し、
見えているもの、聞こえているものを神へと返す。
気がつけば、僕は天王寺を歩いていた。