↑本の表紙を張り替えてみました。
香港は昨日からイースター(復活祭)の休日に入っている。
しかし、なぜか僕は中国の暦で出勤しているので、
昨日は香港事務所でひとり仕事をしていた。
誰もいない気安さで、一人ゆっくりコーヒーを飲みながら、
YOUTUBEでも見て過ごそうと考えていたが、なんやかや電話がかかってきて、
結構忙しかった。
中でも昨日最大のトピックはと言えば、
ロンガン工場の購買部長(日本人45歳)とのやり取りだろう。
昼過ぎにその人から電話があり、月末に上海に行くので、
飛行機のチケットを香港で手配してもらえないか、という依頼だった。
往復キャセイ航空で、便名も決まっているという。
「それなら、ネットですぐに予約できるから試してみては。」と僕が提案する。
「クレジットカードが家にあるんです…。
それにほかの航空会社のときはどうするんですか。」
と少々イラつき気味に問い返してきた。
「でも今回は往復同じ航空会社ですよね。ならネットのほうが便利ですよ。」と僕。
「急ぎなんですけど。」
「急ぎであれば、そちらの総務のカレンさんに相談してみてください。」
「でも、あなたはさっきネットで予約しろと言いましたよね。
ネットなのか、総務のカレンさんに依頼するのか、どっちなんですか。」
そもそも、この人はなぜわざわざ香港事務所のほうへ依頼してきたのだろう。
罪悪感が裏返って怒りに変化するバージョン、きたーっ、とわかる。
「その時々で、自分で判断して決めていいですよ。あなたは部長なのだから。」と僕。
「では、僕が判断したならどんなに高いチケットを買ってもOKなんですね。」
と畳みかける彼。
「判断するのはいいですが、必ず事前に総経理の許可をもらってください。」
と僕が釘を差す。
結局、総務のカレンさんに依頼し、チケットを取ったようだ。
あとで、彼からはお騒がせしました、という謝りのメールが来た。
いつもは、こういう電話にはほかのスタッフが対応するのだが、
今日は自分一人で処理せねばならない。。
表面では普通に現実的な対応をしているが、意識では〝赦し〟をずっと行っていた。
この件をどう解決するか、こういうとき何を話すか、は重要ではない。
普段どんなにさまざまな言葉や気づきを入れていても、事態は突然やってくるもの。
すぐに無意識状態になり、あわあわと対応してしまうのがオチだろう。
しかし、今日はちゃんと今にいて〝赦し〟のための〝ごっこ〟がはじまったことを
捉らえることができた。一人、静かなオフィスにいたことも幸いしていたのだろう。
このとき、僕は彼とやり取りしながら、
いまこの瞬間、別の次元で同時に存在する無数の彼と、
無数のバージョンで渡り合っている自分を感じ取っていた。
エゴは無限の例外を作りだす。
このでたらめな世界で、
いくらすべてに対応できる規則性を探して安心しようとしても無理なのだ。
怒りでへとへとになるだけだ。
しかし、ビジネスの世界(おっさんの世界)では、
こういうときはこういうルール、というものを作りたがる。
感情や好き嫌いを排除して、物事のやり方だけを冷静に見ていこう、という考えなのだ。
物事が起こる本質がどこから来ているのか、ということは考えない。
あなたの意識のこういう部分から来ているのですよ、などと言おうものなら。
ほとんどのおっさんは「レベルが低い」と怒り出す。
この〝購買部長チケットどうする事件〟を赦すことで、
無数に同時進行している別バージョンの〝○○どうする事件〟が削除されてゆく。
この部長の後ろに兄貴が隠れてちょこちょこなんかやっているのが見える。
「もういいよ〜、兄貴−っ、わかったから。」
今にいるのは静寂になるためではないと気づく。
今にいることでこういう無数のバージョンに気付いてゆける。
今日は本棚にある本の表紙張り替えをした。
赤と青とオレンジ。