香港さんといっしょ!ー純粋非二元で目醒めを生きるー

欲望都市香港で覚醒した意識で生きることを実践中。今回を最後の生にするための日常を綴っています。

いつか来た道


↑ベトナムの宝石商佐藤氏。弾丸トラベルで顔がよれよれになっている。

昨日はホテルのスカイラウンジで宝石商の佐藤さんと夜中まで飲んだ。

宝石展覧会で購入した石を渡し、デザインの詳細を伝え、後はワインを飲みながら、

あれこれ話した。

最近ハノイに雑貨やアクセサリーの店を出したこと。

共同出資者の日本人パートナーが指図ばかりで自分では何もしないこと。

雇った店員が怠けてケータイばかりいじっていること。

無呼吸症候群にかかり、酸素吸入器をして寝ていること。

昼間急に眠くなり、しばしば接客中に意識がなくなってしまうこと。

松坂慶子が映画の撮影でハノイの自分の店に来たこと。などなど…。

佐藤氏は饒舌だ。


僕は僕で、ここのブログに毎日書いているようなことを話した。

特に、2本目のワインを開けるころから、なんでそんな話題になったのか、

最近テレビの報道番組で見た多重人格者の話になり、ひとしきり僕がしゃべった。


そのテレビ番組を見て思ったのは、僕たちが他者を造り出しているメカニズムは、

多重人格者が新たな人格を造り出すプロセスと全く同じものなのではないか、ということだ。


幼少期にひどい虐待などを受けた場合、その苦痛に耐えきれなくなった主人格は、

それを肩代わりしてくれる別人格を次々と生み出す。

例えば:主人格の代わりに虐待に耐えてくれる人格、受けた苦痛を慰めてくれる人格、

性的虐待に耐え得る奔放な人格、甘えん坊の幼児の人格、世渡り上手な人格、

暴力的で粗野な人格など、自分の苦痛を回避できるあらゆる特性を持った人格を生み出す。


しかし、たとえ最初の人格分離の原因が両親の虐待であっても、それはきっかけに過ぎず、

その背後には必ず〝自分は親から虐待を受けても仕方のない、罰を受けるべき人間なんだ〟

という根拠のない罪悪感が潜んでいる。

その強烈な罪悪感に耐え切れず、それを代行してくれる別の人格を創造するのだ。

あの24の顔をもつビリー・ミリガンも、5歳の時にうっかりガラスの瓶を割ってしまった

ときに感じた「母に叱られたらどうしよう。」というとてつもない罪悪感と恐怖から

逃れるために、耳が聞こえないトミーという最初の別人格を作り出したのだという。


多重人格者は、自己の肉体の内部にいくつもの人格を投影してゆくが、

僕たちの場合は、父からの分離という、最大級の罪を犯したと勝手に思い込んだことから、

その罪悪感や恐怖を代わりに請け負ってくれる人格を別の肉体、すなわち他者に投影する。

自分の代わりに悪者になってくれる人格、自分の罪を責めてくれる人格、

自分よりも弱い人格、愛してくれる人格、依存できる人格など、

次から次へと出てくる罪悪感からくる恐怖を、無数の他者の肉体に押し付けてゆく。

悪口を言っている人を見て「あんな人にはなりたくない」と思うのは、

自分の中にある〝父に対する怒り(恐怖が裏返ったもの)〟を、

ポンと取り出して他者の肉体に投げつけ、自分にはそんなものはありません、

と涼しい顔をする行為なのだ。

その相手は単に、自分の代わりに悪口を言う人格を担ってくれているにすぎない。

言い換えれば、分離したもう1人の自分なのだ。


興味深かったのは、多重人格者のその治療方法だ。

いろいろ調べてみたら、ある精神科医の教授が書いた論文があった。

複数の人格を主人格に統合してゆく上で、まず最初にやることは、

〝自分は多重人格者なのだ〟と主人格に自覚させることなのだという。

医者は別人格が語ったさまざまな物語をつなぎ合わせ、そのストーリーを、

ビデオや交換日記などの方法を用いながら、主人格に自分の人格が複数に分離している

ことを伝えて行く。

次に、最初の分離が始まったおおもとの原因を理解させる。

その苦痛はすでに終わっており、いまは存在すらしておらず、自分は完璧に安全だと、

本人に自覚させるのだ。

ほとんどの場合、主人格は最初に受けた虐待の記憶や苦痛など、何にも覚えていないらしい。

なぜなら、それらの苦痛はすべて別人格(他者)が肩代わりしてくれているから。


そして、最後に一番重要なのが、自分は安全で愛されているという圧倒的な自信を、

主人格が思い出すことなのだという。

その時には、担当する精神科医や恋人、友人、家族の存在が大きな役割を果たす。


主人格がこの3点をクリアしたとき、分離した複数の人格は自ら〝消えるよ〟と言って

主人格に統合されてゆくという。

あるいは、別人格の中でリーダー的存在である人格が、統合をしぶる他の人格を

説得したりすることもあるらしい。

もともとは主人格を守るために作りだされた別人格なのだ。

主人格が自分は安全だ、と理解した瞬間、彼らは喜んで消えてゆく。



僕たちが父と1つになるプロセスもきっとこんな感じなのだろう。

他者という存在が、自分の苦痛を和らげるために生み出された幻の人格だということに

気づき、認め、それを全面的に赦したとき、きっと他者は消滅するのだと思う。

本当の父は虐待なんかしていないし、怒ってもいない。

ただ圧倒的な愛の光を放っているだけだ。

僕たちが実相世界の住人であることを完全に思い出して、本当の父に出会った瞬間、

兄貴もきっと喜んで役目を終えてゆくのだと思う。


いつの間にか深夜になり、美味いワインをたくさん飲んで、すっかり酔っぱらってしまった。

佐藤さんはこのまま朝の便でハノイに帰ってゆくという。僕も大陸出張で5時半起きだ。

僕はかつての佐藤さんだったかもしれないし、今度佐藤さんをやるのかもしれない、

そして、いまこの人を赦せばもうやる必要はない。

僕は、酔いでふわふわする意識の中、そんなことを考えながら、

目の前でニコニコしている彼を眺めていた。