↑従業員大会の間、窓から差し込む光のフレームに見とれていた僕
金曜日の朝、
誰もいない、ガラーンとした事務所でふぁちゃんと人事の男の子だけが出勤してきていた。
日本人駐在員たちは、朝の朝礼で事情を説明してくれ、でなければ協力できない
と総経理に言い寄ってくる。
僕はもう、これらの光景が完全な〝まやかし〟に見えている。
薄皮一枚のスクリーンに映っている彼らの背後からハートの光が透けて見える。
これまでの経緯、現在の状況、これからのこと、は時間をとって説明がなされるので、
それぞれ納得できない部分はあるだろうが、今日の時点ではまず、C部長の指示に従い、
設備搬出作業に専念するよう総経理から強い口調で指示が出た。
その後、僕の方はふぁちゃんと一緒に経済補償金の振込み作業に取り掛かる。
昨日、ファちゃんが出納係の女の子からさんざん大声でなじられながらも、
忍耐強く聞き出したネットバンキングの暗証番号と操作方法どおりに、
振り込み作業を実行してゆく。
もしこの経済補償金が、来週月曜までに着金されなければ、怒りに燃えた元従業員たちが
再度工場へ押し掛けてくることになる。
ま、それはそれでいいか。ただの設定だし…。
じっとしてれば、また総経理の涙、ならぬ、兄弟の助けの一手が入り、何とかなるのだ。
ふぁちゃんは何度も銀行に電話をかけながら、振り込み操作を確認している。
その後、僕が一人一人の金額を再チェックして、ネットバンキングの承認ボタンを押した。
振込み承認後、急いでホテルにある対策本部へ向かう。
この日は会計士と弁護士を交えての清算手続き作業のミーティングを予定していた。
これから通関手帳の末梢、銀国口座の閉鎖など、やることが山済みだ。
今日になって、ここ数日で起きた様々な事を思い返してみた。
リアルに経験していたその瞬間瞬間は必死で、何が何だかわからない状態だったが、
ストーリーに飲み込まれそうになりながらも、その時々で兄貴を思い出していた自分がいる。
さっとエゴに持って行かれそうになる寸前で、ちゃんと兄貴を自覚してゆだねていた。
その証拠に、いま、全ての人たちが愛に見えている。
この大いなる赦しの日以降、すっごく赦しやすくなっている。
全てがもうデジタルの設定だと分かり、白ける。後は兄貴に削除を依頼するだけ。
↑大いなる赦しの日の夜、ひとりケーキとワインで乾杯。何に?わからない。
昨日くらいからまた見え方は変わってきていて、
これまでは、空間に配置されたモノや物体の手前に自分がいるという感覚だったのが、
モノやヒトの背後側の奥行きに自分の存在を感じ取っている。
腰フリフリ兄貴がイエーイとやっていた、あのファンタジックなイメージから、
もっとリアルで凛とした存在として、薄皮一枚の向こう側にいる光の存在(ハートの自分)
が見えてきている。
今ここで、ブログを書いている僕は〝自分〟ではない。
ニセモノの自分ですらない。もともと存在すらしない気色悪いもの、という感覚。
ああ、だんだん古い自我が消滅してゆく…。