日曜日に放送されたNHKスペシャルは本当に興味深い内容だった。
臨死体験、神秘体験を通して、意識と魂はどこに在るかを探求する番組で、、
医学、脳科学、心理学、精神医学など、あらゆる見地から真相を追及していた。
最初は、何の気なしに見ていたのだが、途中、起こっていないものを起こっていると
錯覚する実験が特に僕の興味を引いた。
まず、被験者が目隠しをして実験室に入り、映像が映るゴーグルをつける。
被験者の隣に人形を置き、カメラでその人形の足を映し出す。
その映像を被験者のゴーグルに映し出す。
被験者は目隠しをされて部屋に入っているので、隣に人形があることを知らない。
すると、被験者にはゴーグルに映る人形の足がまるで自分の足のように見える。
彼の足を棒で刺激しながら、同じタイミングで人形の足も刺激する映像を見せる。
触られている感覚と、見ている映像がまじりあい、被験者は次第に、
映像が自分の足だという感覚に襲われる。
次に、ナイフを人形の足に近づける。そして、ナイフで人形の足を軽く切る。
すると被験者は、まるで自分の足が傷つけられたような恐怖を覚える。
このように、人は間違った知覚(フォールス記憶)によって、
イリュージョンをリアルと思いこんでいる、という実験だった。
また、フォールス記憶を実証するため、次のような実験も行われた。
まず、実験用マウスを安全で居心地の良い平和な環境の部屋に置く。
同時に、ある電気信号を含んだ微量の電流をマウスの脳に流す。
これでマウスには、微量の電流=安全 という記憶が植えつけられる。
次に、マウスを別の部屋に移し、同じ電気信号を流しながら、
スタンガンでマウスの身体に電撃を加える。
これにより、マウスの脳に 「安全で平和な部屋で攻撃を受けた」 という偽の記憶、
フォールス記憶が植えつけられる。
その後、マウスをもとの平和で安全な部屋に戻すと、その部屋は平和で安全な場所
であるにもかかわらず、マウスは恐怖を感じて逃げ惑うようになる、というものだった。
番組では、間違った知覚(フォールス記憶)を植え付けられたことによって、
何も起こっていないのに、恐怖の映像が映し出され、
本当に恐怖を体験しているように感じる、と述べていた。
なんかこれって、僕たちの現実そのものではないのか?
本当は安全な場所にいるのに、でっち上げられた恐怖を見ている。
この番組は臨死体験を通して、魂と意識はどこに在るかを探求していたが、
僕にはこの世界がでっち上げであることを、あの手この手で証明する番組に
見えて仕方がなかった。
ただ、この間違った知覚を元に戻す実験までは、残念ながら出てこなかった…。
僕たちはすでに、父の愛に凌駕された、安全で平和な故郷にいる。
感じている恐怖は、ありもしない映像によって引き起こされている。
その映像の根源になっているのは、父から離れたと誤認した瞬間に設定した電気信号だ。
僕たちはこの信号通り、なにも考えずに反応し、逃げ惑う。
だが、反応している自分も本物ではない。この個性や性格を持っている
意識の自分もフォールスそのものなのだ。
ゴーグルの外に広がっている光の世界を意識する。
あとは、兄貴がゴーグルをそっと取り外してくれるだろう。
そのとき、父が常に自分の隣に寄り添っていたことを知るのだ。