閑散とした深圳工場でふぁちゃんと二人仕事をする。
昼前から彼女が財務室の荷造りを始めた。
来週初めにこの財務室は佛山へ引っ越しとなる。
今日が最後かもしれない、と思うと何とも言えない哀愁が湧き上がってきた。
いろいろあったなあ。
いやいや!
起こってない → ゆえに罪はない → だからじっとしてればいい
昨日一日中やっていた〝起こってないゲーム〟がなかなか心地よかったので、
今日はさらにパワーアップさせてやってみた。
何かを見るごとに、起こってないと宣言し、故に罪もないと明言し、後は何もせず放っておく。
エゴの自分を納得させる手段としては、案外いいかも…。
僕は〝考えを止める〟ということがあまり得意ではない。
だって、考えないって言ったって、考えるもん。やっぱり…。
他人に攻撃されたら、いくら幻想でも、誰だっていろいろ考える。
お金がなかったら、どうしようって、あれこれ算段するだろう。
だから、考えている自分も含めて放っておく、を実践している。
放っておくとき、息を吐きながら5秒くらい、脱力したように頭をぼーっとさせる。
再びぐるぐるが起こってきても、ぐるぐるのままにしておく。
兄貴への信頼はすでにあるので、最近は〝兄貴自動渡し〟状態になっている。
やはり〝考えをやめる〟のは赦した後、兄貴によってもたらされるものなのだろう。
今日、中国からの帰りの列車の中で向かい合わせになっている席のひとつに座った。
ガラガラだったので、まあいいだろうと、自分の荷物を隣の席に置いた。
いつの間にか爆睡していたら、トントンと向かいの人に膝を小突かれた。
はっと目を開けると、周囲は満席になっていて、通路に西洋人の女性が立っていた。
謝りながら、急いで自分の荷物をどける。
5分もすれば忘れてしまうような、一瞬の罪悪感。
起こってない → 故に罪もない → あとは考えても何しても放っておく
多分小声で呟いていたと思う。
今回新しく入社した日本人営業部長の就労ビザを申請するため、
ケリーが用意してくれた書類を持って、香港就労ビザ代行会社へ向かった。
担当の女性が、持ってきた書類の内容をチェックする。
と、彼女が不意に部屋を出て行き、今度は社長を連れて入ってきた。
社長とあいさつを交わした後、彼は申し訳なさそうに、
この申請は成功しないかもしれません、と言った。
訳を聞くと、大学卒で、5年以上の同一業界での職務経験がないと、
香港では管理職にビザが下りないのだという。
この彼は高校を卒業していなかったのだ。
「たぶんダメだと思いますが、申請しますか。」と聞かれ、
「もちろん。お願いします。」と答えた。
ええーっ、彼のように25年の経験があっても、学歴がなければ働けないなんて…。そんなあ。
ああ、起こってない → 故に罪はない → 放っておく
今日は早く寝よう。