天気がすごくよかったので、地下鉄は使わず、
天星埠頭から、フェリーでビクトリア湾を渡った。
至る所に午後の平穏な光が満ちていて、
とても気持ちがよかった。
会計事務所では日本人統括代表の方にお会いした。
50歳前後の女性の方で、明るく、気さくな方だった。
彼女とは数年前、この会計事務所と契約をする際に、
数回お会いしただけで、
それ以後は、担当者と直接やり取りをしていた。
しかし、その担当者が突然辞めてしまい、
後を彼女が引き継ぐということで、
ご挨拶も兼ね、今回会うことになったのだった。
彼女とは、ある赦しのストリーがあった。
実は、直接うちの会社を担当してくれていた
担当者の彼と、この会計事務所を去る直前に、
ふたりで食事をした際、ほろ酔いの彼から、
この統括代表の彼女が僕のことをすごく嫌っている、
という話を聞かされていたのだった。
というのも、僕はよく覚えていないのだが、
彼女と打ち合わせをしていた時に、何を思ったのか、
大阪の幼稚園で流行っているお遊戯の踊りを
彼女の前で、僕が披露したらしい。
〝大阪にはうまいもんがいっぱいあるんやでぇ〜♫。
たこやき、いかやき、もんじゃやき、
なんでやねん!〟
というあの遊戯を、振り付きで踊ったというのだ。
それ以降、彼女は僕のことを気持ち悪い変態だ、
と言って、ずっと僕のことを嫌っているのだという。
ああ、あの頃と言えば、アンフィニで統合を習い、
ワクワクに動いていた頃だったなあ。
きっと、テンションも相当高かったはずだ。
お遊戯の踊りくらい、
すんなりやってのけてもおかしくはない。
もちろん、僕はお客なので、会っている最中も、
彼女はとても礼儀正しく僕に接する。
僕を嫌っている、なんて微塵も感じさせない。
普通に仕事や家庭の話をしながら、
終始にこやかに会話は進む。
僕はと言えば、汚名挽回のため、
地味な紺のスーツに、横分けヘアーをしてきていた。
そして、彼女と向き合いながら、
肉体としての彼女は存在しない、
エゴのでっち上げは信じない、
よって彼女には罪はなく、自分にも罪はない、
と、彼女を映すスククリーンの向こうから差し込む
ハートの光だけを感じたい、と兄貴に渡し続けた。
最後、エレベーターの所まで送ってくれた彼女に、
「もう幼稚園のお遊戯はしませんので。
不快な思いをさせてすみませんでした。」
と謝った。
彼女はもう大爆笑していた。
そして、今度一緒に飲みに行きましょう、
と誘われてしまった。
なんらかの対象物を見て、感じているとしたら、
それがたとえ、悦びであっても、愛であっても、
それは2元だ。
ということをつくづく実感した一日だった。
次々に設定を解除依頼し、やがていつか、
ひとつの感じ方に収斂されてゆくのだろう。
もう〝ハートの想い〟しか信じない。