土曜夜の11時から日曜の朝8時まで、
兄弟てっちゃんとスカイプでガチリトリをしていた。
ラムやジンやワインなどを次々に書斎へ持ち込み、
星谷文庫のロゴのデザインの相談から、
仕事の近況、赦しどころ満載な人の話、
果ては、次元の消去に至るまで、
つまり、あらゆることを語り合った。
普段の兄弟てっちゃんは、そんなことないのだが、
酒が入り、酔いが回ると、
まるで J か何かが乗り移ったかのように、
真理を滔々と語りだすという、
不思議なところがある。
「いま自分が語ってることをそのまま実践すれば、
てっちゃんの悩みなんて、即行解決するじゃん!」
とツッコミたくなるようなことを、
つぎつぎと語りだすのだ。
何を聞いても答えが出てくる。
僕は変身後の彼を〝てっちゃん大師〟
と呼び、あがめている。
いつもはワインなのだが、
今回は職場の社長からもらったという
12年物のウイスキーをロックでやったせいか、
てっちゃん大師降臨の瞬間は、意外とはやく訪れた。
ここぞとばかりに僕は、最近体験している、
理由のない恐怖について、大師に質問してみた。
大師曰く、
現実には、これと言って何も起きていないのに、
言いようのない不安感や恐怖、怒りが出てくるとき、
それは投影される前の〝元ネタ〟が
出てきているのだと…。
普通は、まず、自分の中にある怒りを相手に投影させ、
相手から何らかの攻撃をされる、
という映像を映し出したのちに、
その相手に対して憎悪や怒りを覚える。
これが普段僕達がやっている怒り方だ。
そして、その怒りの対象である相手を見て、
それが自分から出ていたことに気づき、
その怒りを言ったん自分に戻してから、
設定を兄貴に明け渡す。、
それが、一般的な赦しの実践パターンである。
だが、赦しが進み、世界が幻想で、
憎悪の対象も実は存在しない、
ということが理解されてくると、
現実のスクリーンに、自分の憎悪を投影する前に、
その元ネタである、怒りや恐怖感の原型そのものが
湧き出してくるようになる。
結果、現実にはまだ何も起こっていないのに、
なんだか無性に腹が立つ、無性に怖い、
という現象が生じる、ということらしい。
「もちろん、このわけのわからない怒りや恐怖を、
そのまま放っておけば、やがては何らかの出来事が
現実に映し出されてくるんだろうけど、
元ネタのときにそれを明け渡して消去しておけば、
現実化する前に、投影の元が無くなるわけだから、
相手とすったもんだやる必要がなくなる分、
ある意味、ラッキーなんだよ。」
と、てっちゃん大師は言った。
また、これまでの、先に結果を見て、
それから原因である自分の怒りや憎悪に気づき、
赦していくというやり方から、
今後は、結果の元である原因を先に捉えて赦すことで
投影をしなくなるだろう、
と、てっちゃん大師は告げた。
ここ最近感じていた、強烈な不安感に対する
答えが出た気がして、僕はとても嬉しくなった。
多分酔っ払っているから、忘れてはいけないと、
大師の言葉をポストイットに走り書きしていく。
ありがとう。てっちゃん大師。
ああ、頭が痛い。まだ酔ってる。
ゆっくりお風呂に入って、はやく寝ようっと。