その足で、香港上海銀行(HSBC)の本店がある
セントラル(香港の虎ノ門)へ向かう。
この日は、
以前ブログに書いたLC(信用状)開設の件で、
HSBCの担当者と面談することになっていた。
駅の改札口で、今回この銀行を紹介してくれた
信用金庫の黒田女史(35歳位/夫は香港人/仮名)
と落ち合い、HSBCへと向かう。
ビルの門の前まで来ると、
黒田女史が突然、紙袋からハイヒールを取り出し、
履いてきた運動靴と履き替えた。
僕は僕で、急いでネクタイを着用した。
そんな感じで、僕たち、かなり自由。
待合室で担当者を待っている時も、
勝手に備え付けのコーヒーを淹れて飲んだり、
菓子箱のチョコレートを食べたりしていた。
「だって、わたし、全財産ここに預けてるんですよ。
コーヒーくらい飲ませていただきますよ。」
と、彼女。
えっ、自分が勤める信用金庫に預けてないのか?
と心の中でツッコミを入れていると担当者が現れた。
担当者はヘンリーさんという30歳くらいの台湾人の人。
紺のスーツ、刈り上げ64分け、黒ぶち眼鏡、
物腰柔らか、と、もう銀行員を地で行くような人で、
私は真面目ですオーラがにじみ出ている。
で、LCについての話をする。
彼はすでに、
うちの会社の過去三期分の決算書を精査していて、
その結果を観ながら審査基準について説明を受けた。
雑談も含め、かれこれ、1時間半ほど話をした。
結論としては、
金利や手数料、審査期間の長さを考慮しても、
ひとつのプロジェクトのためだけに、
ここまでリスクを踏むのは得策ではないと判断した。
面談が終わり、ヘンリーさんと共に待合室を通る際、
「このチョコレート、すっごく美味しいので、
もう一個もらってもいいですか。」
と言って黒田女史が箱のチョコを2-3個つかんだ。
やっぱり庶民の味方、信用金庫の人ってステキ!
明日、レポートを上げてこの件は一件落着か、
と思いながら、黒田女史と駅まで一緒に歩いた。
途中、彼女が仕事や家庭の事を色々と話し始めた。
ざっくばらんな人なので、
これまでにも色々な話をして来ていたのだが、
今回はちょっと悩んでおられるようだった。
こういうとき、
スピリチュアルな観点から何かを言う、
ということはしないようにしている。
ましてや、世界はない、とか、明け渡す、とか、
赦しについて話すことは絶対にない。
むしろ、重要なのは自分の心の中だ。
彼女の話を聞いて、出てくる分離の想いを、
ただ、決断の主体へと巻き戻し、兄貴に委ね切る。
目の前の彼女に何かアドバイスをして、
変わってもらおう、と意気込む必要はない。
ただ、自分の心の中の赦しにだけ集中する。
陽子と中性子を放射するイメージ。
こういうとき、心の中で明け渡しながら、
その時々に合った普通の受け答えをすればいいと思う。
むりくり、スピ的な何かを伝えようとしなくてもいい。
また、エゴ的なことを言ってしまうことを警戒して、
不自然に沈黙する必要もない。
話を聞きながら、
「僕なら、条件がいいからこちらを選ぶ、とか、
将来こうなるために、今、我慢する、
ということを第一にして決めるのではなく、
今、この瞬間、自分や家族がハッピーかどうか
を基準にして判断する。」
みたいな、普通の答え方をしたように思う。
どうして、彼女がこんなプライベートなことを
僕に相談してきたのかは定かではないが、
兄弟に対して何を言ったか、何をしたか、ではなく、
逆に、ただひたすら、
自分の心の中へと向かうことなんだ、
ということを実感した、楽しい一日であった。