裏手にはホタルが生息する川が流れ、
自然豊かな森が広がる反面、ミニバスで少し下れば、
日本のスーパーやレストランが何軒もあるという、
自然と都会が融合した、とても便利な場所である。
それで、今日も、アピタへ食料を買いに行くと、
あちこちでお正月フェアを実施していた。
おせち、日本酒、しめ縄、日本の果物、和菓子など、
ついつい買いたくなる食材がずらりと並んでるが、
団子ひと串300円、あまおうひとパック2000円、と
日本からの空輸なので、どれもすんごく高い。
それでも、お正月だし、という名目で、
ついつい財布のヒモが緩くなるボク…。
いけない、いけない、しっかりするんだ、周作!
日本へ帰るまで、あと一か月の辛抱じゃないか、
と自分のほほを叩きながらそそくさと退散してきた。
ああ、何の赦しもない、穏やかなクリスマス。
日本ではクリスマスを独りで過ごす人のことを、
〝クリぼっち〟と言うんだって。
僕はもう断然〝クリぼっち〟がいい。
もう、行事ごとなんて面倒以外の何物でもない。
5年前までは、何かと言えばクラブで騒いでいた。
ワインも一晩で一本は空けていたし、
メンビットやハルシオンをやってた時もあった。
でも、それがただの〝記憶獲得ゲーム〟だと、
気づいてしまった。
「こういう経験しました。こういうことやりました。
以上、終わり。はい、楽しい記憶ひとつゲット!」
恋、結婚、出産、ギャンブル、スマホ、仕事、セックス、
一つでも多く〝わたしの記憶〟を獲得するために、
ホルモンが誘発する衝動に操られるまま、
いろんな何かをやりまくろうとする。
でも、結局、残るのは、老人になったら忘れてしまう、
あったのかどうかも不確かな記憶だけである。
決して、それが悪いと言っているのではない。
やりたければやればいい。
でも、もう僕はいいや。
無価値なものを価値があるが如く思い込まされている、
自分は騙されていると解かってやってもなあ…。
とにかく淡々と赦して、消えるに任せるだけですわ。
なんか、ホルモンって、曲者だなあ。
どうも、僕たちに自動反復行動をさせるための、
エゴの秘密兵器に思えて仕方がない。