香港さんといっしょ!ー純粋非二元で目醒めを生きるー

欲望都市香港で覚醒した意識で生きることを実践中。今回を最後の生にするための日常を綴っています。

背後で呼ぶ声



もうすぐ旧正月(今年は1月28日)ということで、

人で混みあう前に散髪をしておこうと、

家の近くにある上海式理髪店へ行ってきた。

日本の理髪店を大型にしたという感じで、

店内には石鹸の匂いが漂い、髭も剃ってくれる。

何で上海式と呼ぶのかは不明だが、上海にはない。

ただ、理髪師の親方たちはみんな御高齢で、

あっちにあるタオルを取ってこっちへ戻ってくるのに

2分くらいかかる。(計った。)

閉店間際に入ったので、おじいさん理髪師たちは、

迎えに来た家族に腕を支えられながら退勤してゆく。

そして、残ったのは、僕と、僕の担当である、

85歳くらいのオールド理髪師の二人だけとなった。


オールド理髪師は、緩慢な動作で、ゆっくりゆっくり、

時間をかけて僕の髪を切り、髭を剃ってゆく。

さすが、年季の入ったオールド理髪師だけあり、

早くこの客を終わらせて店じまいしよう、などという、

ヤング理髪師のようなセコいことは考えない。


理髪師が髭剃りを終え、

僕の顎にシェービングローションを塗ってくれた。

この懐かしい匂い、どこかで嗅いだことがある、

と思ったら、昔、日本の床屋によく置いてあった、

オールドスパイスの香りだった。

実は20年ほど前に、

このコロンをデザイナーの友人からもらったのだが、

ずっと、戸棚に置きっぱなしで忘れていたのだ。


↑泊まったホテルのシャンプーやせっけんを
 集めていた時期があった。(15年ほど前だけど…)

まるで時が止まったように静かな空間で、

顔や頭をマッサージしてもらいながら今に佇めば、

夢を見ていることがメインの意識が遠のき、

〝もう起きる時間だよ。夢は終わりだよ。〟

と声がする方の空間が顔をのぞかせる。

やがて、目覚めるべきもう一つの世界があるような、

不思議な感覚に陥った。


次第に、

ベッドで夢を見ている本体の自分の存在に気づく。

なんだかそわそわウキウキする。

巨大な〝歓びの塊〟がそこまで来ている。

ああ、ハートだ、と思った。

最近、強くなっているのが、

本当に自分は夢の中に暮らしているという感覚だ。

そういう見方をしよう、とか、これは非現実なんだ、

という意識の訓練的な思い込みではなく、

自分は地球で暮らしていると言うのと同じくらい、

ここが夢の世界だ、

という自覚の中で暮らしている。


すると、寝ているときの夢では、

自分の体を見ることができないのと同様、

自分には体が無いような、奇妙な感じがしてくる。


こういう見方でいると、

自分を含めた全ての他者は、

ひとつの意識が作り出した分裂した自己、

つまり、夢の中の登場人物なのだ、

という確信が強くなってくる。


具体的には、善きにつけ、悪きにつけ、

夢の中で他者がさまよっているという感じだ。


自分も、その人も夢で、本当には存在しない、

ということがはっきりと腑に落ちてくると、

赦しやすくなる。

存在しないから赦しやすいというのではなく、

もう一緒に帰ろう、と言う感じである。


そうやって夢の中をたゆたっているうちに、

散髪は終了した。

90香港ドル(約1200円)だったが、

僕は100ドル紙幣を渡し、お釣りはいらない、

と言って出てきた。

背後から「多謝!」と言う親方の声が聞こえてきた。