なんだか今年は、
これまで自分の中で〝良し〟としてきた〝生活〟が、
何かのきっかけで、自分の意志とは関係なく、
突然、ガラガラと崩壊してゆく年のような気がする。
「多分こんな感じの毎日がずっと続くのだろうなあ。」
と、漠然と思っていた日常が、突然揺さぶられ、
人生の方向転換を余儀なくされるのだ。
実際、僕も、年末には、25年間暮らした香港を離れ、
東京に移住することになるだろうし、それに伴い、
これまで勤めていた会社は業務を停止し、僕は、
新会社に再雇用される形で新たなスタートを切る。
当然、仕事もこれまで通りというわけにはいかないし、
生活環境だって、人間関係だって、大きく変わる。
また、こういう環境の激変は、どうやら僕だけではなく
多くの人たちに起こっているようである。
例えば、会社で色々あり、退職せねばならなくなった、
やむを得ない事情で遠くへ引っ越すことになった、
長年のパートナーシップを解消することになった、
など、突然の不可抗力的な事態によって、
生き方を変えざるを得ない人も多いのではないか。
僕の場合、東京行きを社長から打診されたとき、
すぐにこれは聖霊兄貴の呼び声だ、と解かった。
だが、肉体の僕は、素直に〝イエス〟とは言えない。
慣れ親しんだ生活を手放すことに抵抗があったし、
何より、
関西人の僕にとって東京は未知の土地でもある。
できれば、現在の安定した、
自分で予測できる生活に留まりたい。
そこで、様々な〝回避案〟に想いを巡らす。
会社を辞め、このまま香港で暮らし続けようか、
ベトナムのハノイに籠って小説を書くのもいい、
それとも大阪で再就職先を探すのはどうか、など…。
だがすぐに気づく。
たとえ、どれを選択したとしても、
今の生活が激変することに変わりはない、と…。
それに、聖霊兄貴からは、事あるごとに、
〝もういいから、とにかく今年中に日本へ戻れ!〟
と、強いメッセージが何度も入ってきて、
仕方なく観念した、というのが本音というところか。
決して、兄貴への100の信頼で、
〝YES!〟と応えたわけではなかったのだ。
それにしても、
兄貴からのこんなに強い呼びかけは珍しい。
普段は、何を聞いても、
「別にどっちでもいいよお〜。」という感じなのに、
今回に限ってはなぜか、
「つべこべ言わずに帰ってこい!」である。
それも、全部引き払って完全撤退しろ、なのだ。
まるで、今回の日本帰国を逃せば大変なことになる、
とでも言うような切迫感さえ感じる。
まあ、僕の知覚では計り知れない何かがあるのだろう。
兄貴は最善の利益のために幻想を使う。
それは〝利を得る〟ためではなく、安全かつ迅速に、
僕を父の下へ送り届けることへと集約される。
そのために僕ができることは、
ただ、受け容れ、赦すことだけだ。
なので、もし、
僕のように変化を余儀なくされている方がいれば、
ベッドの上に大の字になり、好きにしてくださーい、
と、兄貴に一任してみるのも、手かもしれない。
だって、どうあがいたって、
変化するしかないのだから…。
さなぎが、どんなに蝶になりたくないと言ったって、
時が来れば殻を破って蝶にならざるを得ない。
なので、何も恐れることなどないのだ。