僕はお酒を飲むのが大好きである。
だが、ビールと焼酎は苦手で殆ど飲まない。
チューハイとかサワーも滅多に飲まない。
特にビールなど、炭酸が多いお酒を飲むと、
お腹がパンパンになって苦しくなるのだ。
ワインにしろ、カクテルやウィスキーにしろ
僕の場合、目的が酔うためではなく、
味わいや風味を楽しむことにあるので、
もっと飲んで、もっと酔いたい、とはならない。
もともと、酒を飲むことに罪悪感がないので、
アル中とかにはならない。
というわけで、
2週間ぶりに行きつけのバーに行った。
酸っぱいお酒が飲みたいと言ったら、
マスターがコスモポリタンを作ってくれた。
一番端の席に座り、コスモを飲みながら、
張賢亮の『男の中の半分は女』を読む。
この小説は、70年代の文革時代の性を、
赤裸々に綴り、当時話題となった作品だ。
僕は彼の硬質な文体が大好きで、
自分の小説を書くときは、いつもその前に、
彼の小説を数ページ読み、
文体のトーンに同調させてから書く。
美味しいお酒と大好きな小説、静かなバー、
女の子が「どうぞ」と言って、カウンター越しに
おつまみのあられを差し出してくれた。
一瞬、彼女に対する愛があふれ出した。
彼女も一瞬、わっと驚いたような表情になり、
それから、僕に向かって微笑んで見せた。
僕という個人と、彼女という個人の間で、
見えない想いが交感したのではない。
そんな個人は見当たらず、想いしかない。
〝ひとつ〟を通して愛の想いが伝播する。
意識は無かった。
ひとつの心(聖霊兄貴)として考える。