今日も香港は、終日、冷たい雨が降っていた。
最高気温も9℃と、気が滅入るような寒さだった。
そして、コロナの1日の感染者が7500人を超え、
多くの死者が出ている状況を鑑みた政府は、
ロックダウンはしないまでも、感染者が出た場合
その感染者が勤めるビル丸ごと、
居住しているマンション丸ごと封鎖して、
全員のPCR検査を更に徹底すると発表した。
しかし、そんな甘い措置ではだめだ、と、
北京のこんぴらさんが言い出したため、
ここへきて都市封鎖が現実味を帯び始めた。
それで、早めに食料を調達しておこうと、
ドンキへ買い出しに行ってみると、なんと、
従業員に感染者が出て店は休業になっていた。
仕方なく、近くのスーパーへ行ってみたが、
冷凍食品やインスタント食品などが完売寸前で、
レジには、爆買いをする人の長蛇の列が…。
この様子に脱力した僕は、その場を後にし、
いつも行くカフェで一休みすることにした。
が、そのカフェも、政府の規定に違反したとかで、
営業停止処分を食らって閉店してしまっていた。
それなら家飲みでもするか、と、香港人の友達に
明日ウチでチーズとワインで飲み会でもしないか、
とLINEをしたところ、友人からの返事が来て、
彼の弟がコロナに感染してしまい、
自分も濃厚接触者になってしまったので、
今日から二週間の自宅隔離になったのだという。
筋トレも、マッサージも、カフェも、買物も、ダメ!
大阪へ帰るフライトもキャンセルアンドキャンセル。
どうやらもう、何もするな、ということらしい。
それで、このような貴重で特別な時間を、
最大限大切に、慈しみながら過ごそうと思い、
小説の創作活動に完全集中することにした。
幸い、書きたい作品のネタはたくさんあり、
登場人物と会話をしながら物語を進めることは、
僕にとって、最高に楽しい瞬間となっている。
今ここに、見えているもの、聞こえているものは、
その瞬間瞬間で完璧に決着がついていっている。
その瞬間瞬間で完璧に、何の跡形もなく、
〝死んで〟いってくれているのだ。
そのことがはっきりしてくると、
とてつもなく巨大な感謝の念が湧き上がってくる。
それが、どんなにネガティブな思いであっても、
不変のありがたさに輝いている。
なんていうか、こういう制限された環境だからこそ
些細なことの中に在る有難さに気づけるのだろう。
何年か後に僕がこの文章を読み返したとき、
今日の自分をとても愛おしく思えればいいなあ。