👆 2/29撮影。狂い咲き!
僕の家の近くの沿道にある桜がなぜか満開なのだ。
普通のソメイヨシノで、2月末から二本だけ、
まるで、アホの子みたいに咲き乱れている。
こんな寒い時期にどうして、と思いながらも、
寒風の中、一生懸命咲いている2本の桜を見て、
なんか、すっごくうれしい気持ちになった。
花は、人間のように、
自分だけ先に咲いてしまって申し訳ない、とか、
間違って咲いてしまって恥ずかしい、とか、
他の花からどう思われるだろう、なんて考えない。
ただ、自然の摂理のとおりに咲き、散ってゆく。
そんな花たちの潔さに、救われた気持ちになったのだ。
というのも、
85歳になる叔母(母の妹)が老人ホームに入った。
それで先週、ホームへの引っ越しを手伝うため、
妹と一緒に叔母のアパートへ行ってきた。
陰気で、マイナス思考な母とは対照的に、
叔母はとても陽気で、細かいことなど気にせず、
よくしゃべり、よく笑い、誰とでも友達になれる人で、
僕はそんな叔母が大好きだった。
しかし、杖をついていても転倒するようになり、
ケアマネから施設への入所を勧められた。
👆 ホームの部屋。トイレとキッチンもある
施設は市街地からかなり離れた場所にあった。
当日、僕と妹で、最低限の家具や荷物を選別し、
引っ越しの人に荷物を運んでもらった。
それから、叔母と共にタクシーで施設へ向かった。
公立の施設なのだが、介護士の方達はみな親切で、
食事や浴室も充実しており、自由に外出もできる。
しかし、辺りは一面田んぼで、昔の農家の家が、
ところどころに点在しているだけだ。
近くにコンビニもなく、カフェやレストランもない。
市内行きのバスが1時間に一本出ているが、
バス停まで叔母の足では多分、30分はかかる。
これでは到底外出は無理で、
ちょっとしたお菓子を買うのもままならない。
もちろん高齢なので、スマホもパソコンも使えない。
足以外は何の問題もない叔母はとても前向きだが、
そんな叔母の笑顔を見るにつれ、すごく切なくなった。
叔母は生涯独身で、独りで生きてきたので、
自分の将来がオーバーラップしてよけい切なかった。
しかし、叔母はこれからも生きてゆく。
可哀そう、なんて思う必要はないのだ、と思った。
👆 2022年夏。父の一周忌で叔母と…
あの、冬に咲く桜のように、どんな奇跡が起こるか、
なんて夢の住人である僕達には絶対にわからない。
ホームの中で素敵な出会いがあるかもしれないし、
本人の想像もしない展開が待っているかもしれない。
奇跡に年齢なんて関係ない。
今後は、お菓子をたくさん持って、
できる限り、叔母の元を訪ねるつもりである。