またまた、あの爆買いビンセントが大阪へやって来た。
今回は数人の友人たちと九州を旅行し、そこから、
ひとり大阪へ移動して、映画ドラえもんを見た後、
現在梅田で開かれている《ドラえもん未来デパート》で
爆買いをしたり、街で美味いものを食べまくったり、
運がよければ桜を見て帰りたい、ということだった。
大量のドラえもんグッズを倉庫を借りて保管するほど、
筋金入りのドラえもんファンであるビンセントにとって、
ドラえもんの映画を見るためだけに日本へ来ることは、
イオンに買い物に行くくらい至極当然のことなのだった。
で、僕もちょうど授業実習がひと段落着いたので、
彼に付き合うことにしたのだ。
彼に付き合って、ドラえもんの最新映画を観たあと、
大丸梅田にある《ドラえもん未来デパート》へ向かった。
ここは期間限定で開催されているグッズショップで、
新作映画のグッズを求める人たちでごった返していた。
ちびっこが多いのかと思いきや、殆どが大人だった。
ドラえもんグッズはライセンスが厳しく管理されていて
大部分の商品が日本国内で製造されており、
値は高いが、大人でも使える品質の良いものが多い。
ビンセントはと言えば、27000円の長財布や、
18000円の買物バッグをバンバンカートに入れる。
言っておくが、財布もバッグも革製ではない、布製だ。
ドラえもんは彼にとっての神なのだ、と思った。
ドラえもんを見ている時、彼は自我を離れ、
純粋な〝大好き〟の中で歓んでいられる。
それがある人にとっては大好きな歌手であったり、
推しメンの韓流スターであったりするのだろう。
僕もまた、そういう小説が書けたらな、と思う。
大勢の人に影響を与えられなくても、
誰かにとっての〝大好き〟になれたらいいなと思う。
そうなのだ、日本語教師になるとか、ならないとか、
そんなことを言っている場合ではなかったのだ。
エゴは何かにつけ〝気落ち〟させようとする。
何かにならないと惨めでつらいぞ、と煽ってくる。
でももう、この声が本当ではないことを知っている。
自分には兄貴がいる。だから、恐れるに足りない。
その後、前回行った高架下の焼き鳥屋へ行った。
今回ビンセントが東京ではなく大阪へ来たのは、
この店の〝雌肝〟の味が忘れられなかったからだ。
175円でこんな美味しいものが食べられるなんて、
と感激しながら、10本くらい食べていた。
店の大将にこの事を話すと、とても喜んでくれた。
物価が上がったと言うけれど、日本はやはり、
豊かさが溢れる国なんだな、と僕もうれしくなった。