👆 怪しい香港の不動産会社社長M氏が
日本へやって来たよ!南森町で夜通し飲む
彼と飲みながら語った不思議体験は次回に…
「人のことは一切気にしないことだ」 と兄貴は言った。
僕は今働いていないので、
他人から胡散臭い人だと思われているのではないか,
という考えから抜け出せず、仕事をしている人に,
後ろめたさを感じてしまうのだ、と述べた。
「胡散臭い人だと思われるのを誇れるようになれれば、
君も一人前の物書きだということさ」 と兄貴。
「本当は自分のスタイルで行きたいのに、
どうして〝普通はこう〟に囚われるのか。
日本語教師を目指したのも、私はちゃんとした人です、
という肩書が欲しかったからなんだと思う」
「それもあるけど、物書きとしては、
正しい日本語を学べたことはよかったんだよ。
その証拠に、今中国語に訳している小説の日本文が
いかに稚拙であったかに気づいて再度書き直そう、
と思い始めているだろう」
「恥ずかくて走り出しそうになる文章ばっかりだった」
「君が敬愛する大先輩の稲垣足穂や張賢亮だって、
異端児の中の異端児だった。君は〝普通〟から、
その大先輩たちの領域へ足を踏み入れたんだよ。
普通の人とは一線を画す腹を決めるんだな。
ちょっと時間はかかったけど…。本当はもっと早く…」
「ああ、もういい、わかったから」
👇 1軒目は昭和な居酒屋
2軒目はワインバーで飲んだ
〝なんもり〟で行きつけのバーを開拓し、
作家らしいデカダンな生活を送るのだ!
それから、
僕を南森町(通称:なんもり)に住まわせたのも、
兄貴が導いた結果だ、と言った。
「君を担当したあの不動産屋の人覚えてるかい?」
「ああ、あのホストみたいなすっごいイケメンの人?」
「あれはオレだった。気づくかなって思ってたんだけど」
(気づくわけねーだろ!)
聞けば、
一軒目の不動産屋の担当者がスカタンだったのも、
契約寸前だった部屋をダメにしたのも、その後、
隣の部屋に空きを出させたのも兄貴の仕業だという。
「部屋探しをする前から〝なんもり〟を君の右脳に
インプットし続けていたのに、君はあっちへフラフラ、
こっちへフラフラ、ずいぶん苦労したんだよ」
「じゃあ、初めからこうやって出て来ればいいじゃん」
「俺がこうやって出てこられるようにするために、
一生懸命君を〝ここ〟へ導いたんじゃないか。
君も感じているように、ここは少し特別な場所なんだ」
「ああ、それは僕も感じてる。都会なのにどこか静かで、
なんだか異次元に紛れ込んだような感じがある」
「そう。ここは昔、天満宮の鎮守の森だった所なんだ。
反面、強力な磁場が流れている場所でもある」
兄貴が姿を現すには、僕の意識の状態だけではなく、
乾燥度や磁場といった外的条件も重要なのだという。
そう言えば、兄貴が来ると、すごく部屋が乾燥する。
👇 僕を担当してくれた不動産屋の人
(そういわれれば、どこか兄貴に似てるかも)
兄貴は続けた。
僕だけではなく、誰の前にも兄貴は出現していて、
それは嫌味を言ってくる会社の上司だったり、
態度の悪い店員だったり、ピンチを助けてくれた
優しいだれかだったりする。
ただ、ほとんどの場合、
僕が不動産屋の人を兄貴だと見抜けなかったように、
その人が兄貴だと気づけず、ただ、嫌味な上司、
クソ店員、命の恩人、にしか見えていないのだ、と…。
それから、なんでそんな、
かしこまったスーツを着ているのか、と訊いてみた。
「僕は君のパラレルの分身だということを忘れずに!
だから、今の君が最も信頼できる外見で現れている。
今後、君がもっとデカダンに変わってゆけば、
僕がTシャツ短パンで出てきてもおかしくはないな」
そう言って兄貴は笑った。
👇 なんもり移住計画の顛末はこちら
それから、常識人の枠をはみ出して、
もっとデカダンな生き方をしてもいい、と言われた。
元来僕は、
『檸檬』で有名な大正時代の作家である梶井基次郎や、
台湾の作家白先勇のような、
デカダンな素質を持っているのだという。
また、眠くなってきた。
デカダンについての話はまた次回ということで…。
おやすみなさい。
※デカダンス:
頽廃派、退廃主義、デカダンティスム、耽美的、刹那的。
19世紀のフランス文学の中の象徴主義あるいは
耽美主義運動に関係し、初期ロマン主義の
ナイーヴな自然観の上で巧妙さを楽しんだ
多くの世紀末作家に対して、この名を使った。