
今度こそもう万策尽きたと思われたが、
僕はあきらめない。
ゼンリンの住宅地図があるではないか?
図書館で、
1990年当時の吹田市の住宅地図を探し、
当時の取締役社長(高森氏の義理の父)の
住所がある近辺を中心に見てゆけば、
高森さんの家が分かるかもしれない、と思った。
当時の住宅地図には個人名が記載されており、
しかも、吹田市は古くからある閑静な住宅地なので
高森氏が今もまだ居住している可能性がある。
僕はもう、意地になっていた。

どうしてこの方法にたどり着いたのかというと、
実は、ここ数日、
中之島図書館で国家資格の勉強を始めていた。
(日本語教員が国家資格になったのだ)
高森さんの電話帳の件でここを訪れた時、
勉強するのにここいいじゃん、と思ったのだ。
ここなら、
家からも近いし、静かだし、勉強にはもってこいだ。
だいたい午後1時から5時まで、ここで自習している。
自宅で勉強すると、ネットをしたり、動画を見たり、
コーヒーを淹れたり、ちょっと横になったり、と、
誘惑が多すぎて勉強に集中できないので、
図書館で勉強しようと思い立った。
余計なことをしないよう、敢えてパソコンを使わず、
筆記具とノートとテキストだけで勉強している。
それで、毎回通路を通る際、入り口付近に、
ゼンリン大阪府地図最新版のうコーナーがあり、
それを見て、これ使えるかも、と、ピンと来たのだ。

👆夏休みは図書館で試験勉強
あくる日、
勉強を終えてから、地図を見る部屋へ向かった。
幾人かの人(たぶん探偵さんだと思う)が、
地図を山積みにして調べものをしている。
平成3年の吹田市南部の地図があったので、
僕も手に取って、調べてみた。
社長の自宅はすぐに見つかった。
名前もちゃんとあった。
さすが社長だけあり、区画もデカい。
そこを中心に周囲の家を見てゆく。
が、住宅街なので大量の個人宅が並んでいる。
しかも、字が小さくて老眼の僕にはキツい。
しばらく見ていたが、とても無理だ、と観念した。
吹田市は広すぎるし、家屋が多すぎる。
次のページも見てみるが、高森家はなかった。
社長の家の近くに住んでいた、と言っても、
同じ町内とは限らないし、
駅がいくつも離れている可能性だってある。
作業は果てしないように思えた。
これはもう、とてもじゃないが短時間では無理だ。
というわけで僕は、
高森氏を探す旅に一旦区切りをつけることにした。
一応全力は尽くしたし、やれることは全てやった。
優しくて、いつも僕の味方だった高森さん。
恩返しもせぬまま、今世は終わるのか…。
ひょっとすると、僕には分らない何らかの事情で、
今高森さんに会わない方がいいのかもしれないし、
兄貴に全てを返して委ねていると、またいつか、
ひょんなきっかけで会えるのかもしれない、。
それでも、湧き上がってくる、
罪悪感や、悲しみや、悔しさや、後ろめたさを、
僕は一心不乱に兄貴へ返し続けた。
(つづく…)