↑中古車屋さんに会社のバンを売りに行った。
交渉の末、310万円で買ったホンダのバンが、
111万円で売れた。現金を紙袋に入れて持ち帰り、
即刻、ふぁちゃんに渡した。
今日、仕事を終え、地下鉄で家路を急いでいた時、
自分のすぐ眼前に、半パンにTシャツ姿の男性が、
スマホを見ながら立っていた。
30歳くらいだろうか、
見れば、首も、足も、腕も、顔も、
全身ひどいアトピー性皮膚炎に覆われている。
ステロイドの後遺症なのか、肌がただれたように、
シワシワになり、粉が吹いたようになっている。
が、本人はもう慣れっこになっているのだろう。
さして気にする風もなく、スマホをいじっている。
彼を見ているうち、自分が背負わなかった何かを、
彼が肩代わりしてくれているように思えてきた。
「彼の肌を世界一きれいな肌にしてください。
そして彼が世界一幸せになりますように…。」
気が付けば、僕は聖霊に祈っていた。
はなから何もしていない彼はすでに赦されている。
実在でないものを実在としない。
ただ、自分は騙されているだけなのだ。
こんな、ありもしないモノなんかに負けるな!
心の中で彼の中の〝何か〟に祈った。
そう兄貴に祈っていると、突然、
「ああ、この人のアトピー、もう治ってるわ。」
と、僕の心の中に100%の確信が生まれた。
もちろん、ほんの数分電車で隣り合わせた、
もう二度と会うこともない彼である。
しかし、聖霊兄貴にお願いをした瞬間、心の中では、
すでに彼は完璧に無実であり、
病気なんかあり得ない存在となっていた。
なぜなら、
それは治ったと〝神の子の僕〟が宣言したから。
彼は、僕が降りる駅の一つ手前で降りて行った。
そのとき、僕はその彼を、普通の皮膚に戻った彼
として見送っていた。
イエスもきっと、
こうやって病人を癒やしたのだろうな、と、思った。
それは、奇跡でも、魔法でも、何でもない。
それは、ただ、相手を尊い兄弟として慈しむ心であり、
どこまでも兄弟を、無辜で完璧な存在として見つめる
優しい眼差しだったのだ。
だからと言って、Jのように、
どんな状況下にあってもこのような眼差しが持てるか、
と言われれば、まったくまだまだではあるが、
たとえ一瞬でも、この感覚が持てたことが嬉しかった。
今日もトレーニングだった。
昼間にちゃんと栄養を摂るようになり、
きついトレにも付いて行けるようになってきた。
トレの最中、天田トレーナーが僕に言った。
「星谷さんが来て少し経ったころからですかね。
何でかわからないんですけど、
周りの同僚たちがなぜかすごく優しいんですよ。」
それまでは、独立採算制のトレーナー同士、
生徒の取り合いや、保身からくる攻撃など、
どこかギスギスしていて、
特に日本人の客を独占している彼には、
わざとマシンを使わせないなどの嫌がらせもあり、
いろいろ大変だったらしいのだが、
ある日を境に、なぜかみんな、
気持ち悪いくらい優しく話しかけてくるのだという。
あれ?それって、オレのパターンとおんなじじゃん、
と思った瞬間、ああ、そうか、と納得した。
自分が赦せば、赦した相手も、
自動的に周囲を赦していることに気づいたのだ。
自分が赦した相手が優しくなるということは、
相手の心の中にも何らかの変容が起きたからであり、
その変容が、相手の周囲に伝播したのだ。
僕はいままで、自分が心の中を赦したら、
自分の周囲の世界だけが変わると考えていたが、
そうではなかった。
赦しは伝播する、ということを実感し、
すっごく嬉しくなった今日の僕であった。