ここ2週間ほど、体調がマジで最悪だったのだ。
鼻水、のどの痛み、倦怠感、咳、が続き(熱はない)、
医者に行って薬を飲んでも一向に良くならなかった。
幸い、コロナでも、インフルでもなかったので、
マスクをしながら、なんとか根性で授業はこなした。
それ以外の時間は、ベッドの上に仰向けになりつつ、
肉体の苦しさを、そのまま兄貴に放出し続けていた。
「何の問題もないので、かっさらってってください」
「もう、どうにでもあなたの好きにしてください」
と、夢の一切を兄貴に託して、何をも思わない。
そこに、風邪で苦しんでいる〝自分〟はなく、
ただ〝しんどい〟だけが湧いて出てきている。
逆に、苦しんでいる自分がどこにもいないので、
何の問題もなく大丈夫だ、という感覚になってくる。
それで、数日が経ち、体調もだいぶ回復した頃、
この日は、僕が日本語を教えている専門学校で、
追試を受ける生徒の監督をする仕事があったため、
身支度をしようとシャワーを浴びていたら、
体じゅうが猛烈に痒くなってきた。
鏡を見ると、全身に蕁麻疹のような発疹が出ている。
うわーっ、と思いながらも、時間がなかったので、
とりあえず、スーツを着て、学校へ向かった。
(専門学校は家から歩いて2分のところにある)
3人の先生と一緒に12名の生徒の試験を監督する。
その間も、背中や胸はゾワゾワとかゆかったが、
やっぱりそこに痒がっている〝わたし〟はなく、
なんていうか〝かゆーい!〟だけしかない。
痒さがギンギン立ち現れては通り過ぎてゆくなか、
状況を何とかしようと深刻になる〝個〟がいない。
生徒たちは、真剣に試験に取り組んでいる。
何を見ても愛おしい感覚だけがある。
このとき、外で起きている事は関係なく、
全ては〝わたし〟の中だけで起こっていて、
〝わたし〟がいなければ苦しめないんだ、と悟った。
👆 どーや!すごいやろ!
これが、全身にできてるんやで!
追試の採点結果を提出して、学校を後にした。
途中、皮膚科クリニックがあったのでふらっと入った。
男の先生が、時間をかけて丁寧に診てくださった。
これは蕁麻疹ではなく、風邪の薬に付随した薬疹で、
ウイルスに抵抗する体の反応みたいなものだという。
「強めのステロイド剤で3日間の短期決戦に出ましょう」
と医師は言った。
ステロイドの使用は正直怖いです、と言うと、どうして、
と訊かれ、肌がボロボロになりませんか、と訊き返すと
「あなたの皮膚はすでにこんなにひどくなっている、
すでにボロボロで、だから直すんです、それに、
医者が患者の肌をボロボロにする処方などしません」
と優しく、しかし、きっぱりとした口調でおっしゃった。
ああ、このお医者さん、聖霊兄貴だ、と思った。
つづく…