今回の孝弘との再会については、
様々な〝縁〟が働いていたのだな、と今になって思う。
特に興味もなかった会社の面接に行くことになり、
その帰りに、ふと孝弘を訪ねようと思い、再会後も、
アニータの本を彼に貸したりして交流が始まった。
(※彼の家までは自転車で行ける距離である)
たぶん雄太とも、
そのうちちゃんと向かい合う機会が来るのだろう。
そのために自分は何もする必要はないと思っている。
自分はただ、今この瞬間に見えているもの、
聞こえているもの、感じているものに委ね、
抵抗を止めて全ての流れを許容していくだけだ。
そういえば、東京にいた時、兄弟てっちゃんからも、
「今回日本へ戻ってきたのはきっと、向き合うべき
たくさんのことがあるからかもしれないね」
と言われたことを思い出した。
そう、僕には、30年にも及ぶ海外生活とは別に、
日本に置き去りにしてきた様々な〝想い〟があった。
母や妹との想い、雄太や孝弘との想い、
不義理をしたまま出国した数々の人達との想い、
それになにより、日本人としての自分への想いなどだ。
もうすでに赦され切って跡形もなく消え去っているのに、
無意識のうちにずるずる引きずっている想いを直視し、
兄貴に全部捧げ切ってゆくのだ。